チパヤの直列配置型住居−1(チパヤ、ボリビア)

ー雑誌に掲載したものからの転載ー

標高4千メートル近いアンデス高地、塩の浮いた芝地の大平原に、チパヤ族は暮らす。言葉から風習、服装に至るまで他の部族から孤立し、住居も例外ではない。

建て込んだ本村を外れると、四方は平原が広がるだけだ。その平原に、昔ながらの住居が、低密度で散らばっている。

平原の家は、数棟から成り、それらが、南北軸上に一直線に建つ。円筒形の壁に、優雅な丸屋根を載せた小屋と、卒塔婆のような円錐型の調理場、それに、腰高の家畜の囲い場。壁は、周りから切り出した芝土のアドベ、屋根は、低潅木の骨組に、わらと粘土でつくったシートを被せ、さらに、わらを葺いて仕上げる。東側にだけ開口部があるのは、夜半、西の山から吹き下ろす凍るような風を避けるためだった。

見渡せば、そんな住居単位がぽつりぽつりとどこまでも続く。本村と平原の間を、チパヤの人々は、家畜連れで往復する。どうやって自分の家を見つけるのだろう。同じような要素が繰り返し、目印もない。

南端のコイパサ塩湖まで3時間余りを歩いてみた。本村が消えると、風景は動かなくなり、どれだけ進んだかも分からなくなる。地面は、遠ざかるに連れて、薄雪のような塩が反射面となり、鏡に変わる。空と大地の境界は溶け、遠い住居や山々は、雲のように浮かぶ。繰り返しの単調さは、鏡像効果と、起伏のない平原、強いハレーション、無音により、増幅され、距離感が消失していく。リアルがアンリアルに変容する瞬間に立ち会っていた。

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交通:オルーロから不定期のピックアップトラックで約7時間、または、オルーロからチリのイキケ行きバスで、エスカーラまで約4時間、下車後、オートバイチャーターで約3時間。

参考文献:

Upload:2008.08

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Photo by Daigo Ishii