青森のお祭り:えんぶり - 6
(八戸、青森、日本)

「えんぶり」の名は、水を引いた田を平らにかき均す代掻きで使う農具「えぶり」に由来し、採り物のうち、「ながえんぶり」の主役、藤九郎の持つ「ナリゴ(鳴子)」が、「えぶり」を象徴したものと言われています。

1メートルほどの棒の上部に、絵馬のような形をした鳴子板を取付、そこに、竹管や鉄片、鉄輪を取り付けて、しゃんしゃんと鳴らします。棒の下部には、白い紙を巻き、松の小枝を差しています。棒によっては、黒漆を塗っているようにも見えました。

「ながえんぶり」で藤九郎以外の太夫の持つ採り物が、鍬を由来にした「カンダイ(鍬台)」で、鍬から金物の刃を取り、代わりに、ステッキのように、先端を丸く返したものです。明らかに、藤九郎の「ナリゴ」に比べ、シンプルになっています。

一方、「どうさいえんぶり」の採り物「ジャンギ」は、「ナリゴ」を簡略化した形で、棒の先に、鉄片、鉄輪が付いています。同格の太夫が全員、「ナリゴ」を持つのは仰々しいし、さりとて、「カンダイ」では「ながえんぶり」より格下に見えるし、というあたりで落ち着いたのでしょうか。

最後に、「えんぶり」で忘れてはならない祝福芸の舞い手の衣装。代々伝えられたものか、と思いきや、出番を見守るお母さん方の話では、毎年、彼女たちが手作りするそうです。

それにしても、南蛮風も入った伝統柄らしき布のオンパレードは、東京の大きな生地屋でもあまり見掛けないので、布はどうやって手に入れるのか伺うと、その辺でふつうに買えるみたいな話で、八戸は、実は、日本の伝統柄のテキスタイルの流通拠点になっているのかもしれません。あるいは、「えんぶり」の季節が近づくと、営業マンが大挙して訪れるとか?。

子供たちの着こなしがいいのか、ちょっとアレンジすれば、ダウンジャケットに転用できそうなお洒落な伝統柄を、「えんぶり」を見るたび、再発見するのでした。

英語版へ移動する

Google Maps で場所を見る

交通
八戸駅からバスで20分(10分間隔)、十三日町、三日町で下車。

リンク
えんぶり(八戸市役所)
えんぶり(八戸観光コンベンション協会)

八戸市役所
八戸観光情報
八戸観光コンベンション協会

青森県観光情報サイト

宿泊施設のリスト
八戸市の宿泊施設

参考文献
"青森県の歴史散歩" (青森県高等学校地方史研究会編, 山川出版社, 2007)
"図説青森県の歴史" (成田稔・長谷川成一, 河出書房新社, 1991)
"郷土資料事典 青森県" (人文社, 1998)
"季刊あおもり草子第25号" (企画集団プリズム, 1985)
"えんぶり読本" (正部家種康, 伊吉書院, 1992)
"江戸時代ひとづくり風土記2青森" (農山村漁村文化協会, 1992)
"八戸市博物館 えんぶり展" (八戸市博物館, 2012)
"八戸三社大祭の歴史"(三浦忠司, 伊吉書院, 2007)
"八戸三社大祭公式ガイドブック"(八戸観光コン

Upload
2018.01 日本語版の文章、写真+英語版の写真

Update 

← previous  next →

Copyright (C) 2010 Future-scape Architects. All Rights Reserved.
無断転載は、ご遠慮いただくようにお願いいたします。

← previous  next →

えんぶり 採り物

えんぶり 衣装

        Photo by Daigo Ishii