ジェフリー・バワの建築:
シーマ・マカラ寺院
(コロンボ、スリランカ)

シーマ・マカラ寺院に着いたとき、最初に目に入ったのが、青い瓦屋根でした。

町も村も、ほとんどの家が、赤い瓦屋根を載せているスリランカで、家型に近い寺院の屋根が青いのは、かなり際立っています。瓦と言っても、風合いがあり、安っぽさはありませんから、新鮮で、斬新に見えましたが、それは、外国人の見方かもしれません。

建物の並ぶ岸から離れて、湖に浮かび、この地区の焦点のように佇んでいますが、それでも、スリランカ人から見ると、景観の掟破りの破廉恥なデザイン、なんてこともあるのでしょうか。

実は、この青い瓦は、バワのオリジナルではなく、元々は、赤瓦だったようです。スリランカには稀な青い瓦のつくる「特別さ」を見てしまうと、特別な場所にある特別な寺にはふさわしいと、思えて来ます。

寺は、3つの正方形の島から成り、それが橋で結ばれています。中央が本尊を祀る大きな本堂、北側が小さな会堂、南側は小さなストゥーパと菩提樹を囲み、四方に神々の祠が置かれています。本尊を脇侍像が補佐するように、本堂が両側の島で補佐されています。

本堂は10メートル四方の小さな建築ですが、バワの力量が窺える作品です。単純な架構による一室空間の四周を、スリランカ建築をモチーフとしたような木のスクリーンが、軒先に向けて、斜めに掛けられています。たったそれだけなのですが、木彫を施したスクリーンの格子のデザインや繰り返しの間隔、角度の微妙なバランスで、繊細で美しい建築に仕上がっています。そして、朝から夕まで、格子を通して入る光の、刻一刻と変化する様が、そのまま室内に映し出されます。

つくり方は、とても近代的なのですが、地域の建築文化(バワは、スリランカだけでなく、インド、ネパールも意識していたようですが・・・)が巧みに重ね合わされた結果、近代建築とも、そして、伝統的建築とも距離を置きながら、しかし、2つをつなげる力を手に入れた建築になりました。

だとしたら、青い瓦も、それにふさわしい場を見つけたのかもしれません。

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交通
コロンボ中心部から車で10分程度。

参考文献
Geoffrey Bawa the Complete Works (David Robson, Thames & Hudson, 2002)

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シーマ・マカラ寺院 (1978)

        Photo by Daigo Ishii

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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