フェニックスのヴィクトリアン・ハウス - 1
(フェニックス、アリゾナ、アメリカ合衆国)

フェニックスのダウンタウンの外れにあるロッソン邸。元々の敷地の回りが、今は、Heritage Squareとして、民家村になっています。その中心が、このロッソン邸。見学した感想は、思ったより慎ましやかだなというもの。

ロッソン邸は、カリフォルニアで活躍した後、事務所をアリゾナに移した建築家 Alexander P. Petitによって、1895年に完成しました。

外見の装飾や、複雑な屋根が華美ですし、ヴィクトリアン様式の評価が、今一つなのも、装飾過剰競争に陥ったあたりにあるから、それを慎ましやかと評すのは、不謹慎でしょうが、持ち主が医者で(後に市長になりました)、土地があり余っていただろう19世紀後半のフェニックスに建てた割には、これみよがしな空気を感じません。

表の居間から、家族用の居間、個室と使用人の部屋まで、260平米に10室ほどあるから、そこそこ所得のあるブルジョアなりの慎ましさだとしても、各部屋は、控え目な大きさ。フォーマルな部分も、プライベートな部分も、美しい柄の入った壁紙や、文様を型押しした錫の天井板で、つくり方に差を付けません。ということは、家族の場所をおろそかにせず、大事につくっているということ。

色使いや装飾も抑え気味で、かすかに華やかなものの、静かな空気に満ち、地に足が付いた感じです。慎ましい印象は、外向きの空間にだけ、お金を掛けたのではなく、穏やかな家族生活への心配りをそこかしこに感じたからでした。

「アメリカの住宅生産」(戸谷英世著、住まいの図書館出版局、1998)によれば、ヴィクトリアン様式の住宅は、キリスト教への回帰の表現として、教会の十字型プランを踏襲しましたが、ロッソン邸も、複雑な出入りで目立たないものの、確かに十字型。

そして、人間の身体のプロポーションの美しさに家を例え、頭に当たる屋根や飾りを重視した通り、レンガとの相性が思い掛けないほど美しい黄色の鋼板屋根に、繊細な金属細工が映えます。ベランダも、神の手になる自然と家を結ぶ場所として、大事な要素だそうですが、ここでも、アリゾナの暑い日差しに深い影をつくります。

ヴィクトリアン様式の住宅と宗教観の蜜月は、やがて形骸化し、ブルジョアに属していることを示すステイタスに利用されるようになりました。装飾系の建築で装飾競争は必然だったのでしょう。しかし、一見すると、地元職人の手の技で丁寧につくったように見える装飾部材ですが、実は、当時アメリカで発達した住宅部品のメールオーダーシステムで、供給されるようになったそうです。そのあたりも、微妙な評価の背景かもしれません。

ロッソン邸には、しかしながら、装飾のための装飾からは一線を画した、ヴィクトリアン様式本来の敬虔な眼差しが残っているように感じました。

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交通
フェニックスのダウンタウンから徒歩15分。

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旅行の際に調べた情報であり、評価については、各人でご確認下さい。

参考文献
アメリカの住宅生産(戸谷英世著, 住まいの図書館出版局, 1998)
アメリカンホームの文化史(奥出直人著, 住まいの図書館出版局, 1988)

Rosson House Museum
National Resister of Historic Places
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ロッソン邸 (1895)

 Photo by Daigo Ishii