先住民を訪ねて - 2:
モンテスマ・キャッスル
(カンポ・ヴェルデ、アリゾナ、アメリカ合衆国)

モンテスマ・キャッスルは、アリゾナ中部、標高1100メートルの高原の川のほとりに立っています。

5世紀からこの地で生活を始めたシナグア族の遺跡です。名の由来は、スペイン語のSin Agua、すなわち、Without Waterですが、後に付けられたもので、元々の呼び方ではありません。発見時、メキシコのアステカ族の王が逃避した場所と誤解されたことにちなむモンテスマ・キャッスルの由来も誤りです。

川は、乾燥地帯を抜けて来たとは思えないほど、たっぷりと水をたたえ、岸辺には、曲がりくねり、白と茶のまだらの樹皮が印象的な、アリゾナ・シカモアの林が続きます。その奥に、20階ほどの高さの石灰岩の崖が、屏風のように立ち上がり、中腹に1カ所、足下に1カ所、遺跡が残ります。

このランドスケープが、インディアン居住地の典型か判断する知識はありませんが、原風景を感じます。

豊かな水を利用した農業(とうもろこし、豆、カボチャ、綿など)と、水辺の植物からの採取で、食糧に恵まれ、木々は、屋根の用材となりました。見晴らしが開けた崖の住居は、侵入者や自然現象の変化を察知しやすく、背後は岩に守られているため、外的の来襲に万全です。平地と崖地の利を巧みに組み合わせた理想的な場所です。

と言っても、孤立していた訳ではなく、交易ネットワークの中で、自分たちは、塩や鉱物、織物を出す一方、メキシコから銅製品、ニューメキシコからトルコ石、カリフォルニアから貝殻がもたらされたそうです。さまざまな種族がネットワークで結ばれていた姿に、コロンブス到達以前の北アメリカに描いていた未開のイメージが変わって行きます。

しっかりとした住居が残るのは、中腹の遺跡で、崖の窪みを利用した、高さ12メートル×長さ27メートルの5階建て。石灰石を積み上げた壁を、土で塗り込め、そこに、アリゾナ・シカモアの梁を渡して、屋根を架けます。出入りは、すべて屋根から、梯子を利用して行ったそうです。

ホピ族の台地の集落、オライビやワルピに、石を積み上げ、土を塗った家のつくりが、似ています。

現存する集落で、アメリカでもっとも古いオライビができたのは、12世紀半ば。モンテスマ・キャッスルが13世紀。遺跡の時代の集落が、世界有数の先進国、アメリカ合衆国で、今にいたるまで引き継がれ、機能しているのは、見方によっては、これほどサスティナブルな文化もありません。

1425年頃、シナグア族は忽然と姿を消します。その理由も、どこに行ったかも定かでありませんが、ホピ族の伝説には、シナグア族が彼らの地に合流したと示唆する個所があるそうです。

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交通
フェニックスから車で約1時間半。
フラッグスタッフから車で約1時間。

リンク
National Park Service

宿泊施設のリスト
Luna Vista Bed and Breakfast

Comfort Inn
Days Inn Camp Verde
旅行の際に調べた情報であり、評価については、各人でご確認下さい。

参考文献
"Ancient architecture of the Southwest" (William N. Morgan, Univ of Texas, 1994)
"The Southwest" (Steven L. Walker, The Camelback Group Inc,, 2009)
"Indians of American Southwest" (Steven L. Walker, The Camelback Design Group Inc + Canyonlnads Publications & Indian Art, 1994)

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モンテスマ・キャッスル (5世紀 - 15世紀)

        Photo by Daigo Ishii