建長寺西来庵(神奈川県鎌倉市)

西来庵は、建長寺を開山した蘭渓道隆を祀る塔頭で、境内の道場では、20人ほどの雲水(修行僧)が修行をしています。

唐門を入ると、植込の奥に、本堂、昭堂、僧堂に囲まれた中庭が広がります。三方の建物の軒が高くないこと、引きが取れず、屋根面があまり見えないことにより、建物には、のしかかるような印象はなく、スケールの細やかな中庭と、バランスが保たれています。さらに、三棟の軒の高さがあまり変わらず、奥に向かって線が通って行くことで、修行道場らしい、整然とした、そして、心地よい緊張感を併せ持った空間となりました。中央に植えられているのは柏槇の木で、中庭のスケールゆえ、大きく感じられます。柏槇は、葉が上を向いて開くことから、向上を示すとして、修行を行う禅寺に好まれて植えられたそうです。建長寺の境内にも、大樹が立ち並びます。

大正時代に建てられた本堂と僧堂を左右にして、奥へ進むと、重要文化財の昭堂が現れます。

奥にある蘭渓道隆の像を祀る開山堂に対して、礼堂の役割をしているのがこの昭堂です。開山堂に入ることが許されるのは、管主とお供えを行う担当のみ。それ以外の者は、この昭堂から、相の間ごしに、開山堂を礼拝するそうです。

昭堂は、1634年の建立。全体で5間×5間の建築で、建築的に言えば3間四面堂、すなわち、3間×3間の中央の空間(身舎)を、1間の四方空間(庇)が囲む形式です。そこに、茅で葺かれた寄棟造りの大屋根が掛かります。

外から一見すると、小さなお堂に見えますが、室内に入ると、その印象からは意外なほど、天井の高い空間が出現します。ふつうのお堂と違い、昭堂の中には何も置かれておらず、ただ、瓦敷きの床が広がるだけなので、いっそう高く感じられるのかもしれません。簡素な組物や、素地の板で仕上げただけの内壁や天井も、それを強調します。

そぎ落とされた構成、仕上にもかかわらず、昭堂の空間が、単調にならず、凛とした、すがすがしい印象を与えるのは、たる木や組物、格天井、瓦など、それぞれのエレメントの繰り返しのモジュールが細やかなこと、そして、お互いの微妙な基準間隔のずれが重なり合い、静かな複雑さをつくり出しているからだと思います。他の禅宗様のお堂に比べて、近代的に感じられるのも、それ故でしょうか。

外壁の足元回りは、壁が設けられておらず、吹き放されています。薄暗い内部にいても、閉塞感がなく、開放的で外が近く感じられるのは、その効果でしょう。それもまた、すがすがしさを呼び込みます。

朝も、夜も、いつでも自由に礼拝できるように、昭堂の扉は、24時間開け放たれているそうです。この寺における、堂のあり方の開放性が、建築のデザインに、反映されています。

僧堂の前に吊された板木は、時を告げるたびに、少しずつすり減って行きます。板木に孔が開くと修行が休みになるため、雲水がそろそろだと心待ちにしていると、新しい板木に変えられるそうです。そういう話を聞くと、厳しく見える世界にも、自由な空気の流れていることが伝わって来ます。

住所:鎌倉市山ノ内8

見学:非公開

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Upload:2007.06

 

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昭堂

僧堂

Photo by Daigo Ishii