瀬戸内海の離島、伊吹島につくられた消防署兼総合防災センター。
「消防車庫」と消防隊員が待機し、防災時の避難所となる「待機室・避難室」、そして、屋上の「火の見櫓・展望台」から成ります。
かつて小学校の校庭だった大きな空地に立ち、空地のランドスケープが宙に浮かび、建築化したようにデザインしました。「火の見櫓・展望台」は、自然芝仕様の人工芝で仕上げ、来訪者や島民が、島のすばらしい景観を望み、昼寝やピクニックができるつくりにしました。
下から見ると家並みのスカイラインに埋もれ、集落の高い場所から見下ろすと、点在する畑や緑とつながり、景観に溶け込んで行きます。
そこに、敷地の周りで見え隠れしていた、さまざまな人の活動を受け入れる場を配しました。人口減少、高齢化で、人の気配が少しずつ減りつつある島では、ささやかな気配の顕在化さえ、島を元気づけます。
例えば、老人会がペタンクの後で休憩できる日影のテラス、放課後に子供たちが水遊びする水場、消防の集まりが集落から見える待機室。消防車庫は、4m近い窓を持ち、今まではシャッターの奥に隠れていた、貴重なオート三輪を含めた4台の消防車が、見えるようになっています。物の気配も、また、背後にいる人を暗示します。
所在地 香川県観音寺市
延床面積 152.48m2(46.1坪)
構造 鉄骨造1階建
建築主 観音寺市
構造設計 大賀建築構造設計事務所
設備設計 明野設備研究所
施工 伊井工務店
島の消防署と集落の景観。集落の中に点在する畑や木々の緑と、ランドスケープのような消防署の建物が溶け合って行く。
屋上は、自然芝仕様の人工芝で仕上げ、地面が宙に浮かんだように見える。島の形を描く手すりが中央を囲み、来訪者が昼寝やピクニックできる。
南側外観。湾曲した屋根の下、左側が待機室、右側が消防車庫。消防車庫の窓越しに、観光資源のオート三輪の消防車が見学できる。
南西側から見る。ガラス窓を通して、待機室が見える。消防の集まりの際は、集落から活動の気配が見える。日差しや雨を避ける屋根が出ている。
屋上は、展望台と火の見櫓を兼ね、アスファルト防水を押えコンクリートで保護し、その上を人工芝で覆っている。採用した人工芝は、大きな褪色や劣化に関して、20年近くの耐久性が認められるものであり、それが、押えコンクリートの紫外線による劣化から保護する。
屋上から、集落を海の風景を望む。
屋上に上る階段の様子。外に向かって開くような形状にすることで、人を誘い込むようにした。
待機室は、災害時の避難室を兼ねている。柱、梁、天井は、構造材をそのままデザインとして活かしている。
待機室の窓から、集落の景観を望む。同時に、集落からも、消防の集まりなどの活動の様子が見える。
待機室から見える夕暮れ時の集落風景。
消防車庫。構造材をデザインとして活かしている。通常時及び災害時の日中、人工照明なしで、室内の活動ができるように、大きな窓を設けた。
屋外から消防車庫を望む。大窓を通して、この島の観光資源でもあるオート三輪を含む4台の消防車を見学できる。
集落から見た建物の様子。畑や木々とつながり、集落景観に溶け込んでいる。