ジェフリー・バワの建築:
パラダイス・ロード・ザ・ギャラリー・カフェ(コロンボ、スリランカ)
今は、お洒落なカフェ兼ギャラリーとして、人気を集めていますが、生前のバワが事務所として使い、さらに遡れば、個人住宅として設計したものの、完成直前にクライアントにキャンセルされたため、事務所としてバワ本人が引き継いだ経緯があります。
建築のスケールの細やかさも、その出自ゆえで、事務所用に改造された部分があるとしても、バワの住宅、そして、熱帯の住宅の好例に触れることができます。
敷地は、間口15メートル×奥行70メートルのうなぎの寝床。建て込んだ都市の中心部にありがちな敷地です。細長い土地に、3つの中庭を設け、屋内、半屋外、屋外を、巧みに組み合わせています。
表通りの大きな門屋を入ると、一つ目の中庭。車寄せを兼ねた単純な中庭ですが、巨大な門屋と樹木が、喧騒を遮り、静かな気配に満ちています。
小さなドアを入り、ダイニング棟の細い廊下を進むと、二番目の中庭です。中央に細長い池、それを囲む瓦屋根の回廊、そして、空に開いた坪庭。その中庭から出入りするように、さまざまな個室が囲んでいます。スレンダーな回廊と池を挟み込んだだけなのに、室内から半屋外を経て屋外までの関係が複雑になり、活き活きと結び付いて行きます。
梢が屋根のように掛かり、隣家との間に高い壁が立つので、空は視界に入りません。外の視線から遮られ、落ち着いた雰囲気です。大きな吹抜を持ち、自然光の照明と自然風の空調付きの、もう一つの居間の趣です。
今は、ショップとカフェをつなぐスペースや、ギャラリーとして使われ、ゆっくりくつろぐ場所ではありませんが、住宅として使われていたなら、熱帯生活を快適に送る要の場になっていたことでしょう。
次のリビングルーム棟は、いちばん奥にある3番目の中庭に向かって、建具を入れず、部屋が大きく開き、一体につながって行きます。15m四方の中庭は、今は、その半分に、大きな屋根が掛かり、カフェのメインスペースに姿を変えていますが、当時は、都市の中にぽっかり空いた小さな原っぱのような空間だったのかもしれません。
2番目の中庭が室内的な屋外だとしたら、ここは、建て込んだ都市の中とは思えない、広々とした開放感を呼び入れる屋外として、対照的です。
半屋外空間と中庭を建築に取り込む手法は、バワの専売特許ではなく、熱帯の大都市の住宅では、往々に見られますが、この建築の中庭、特に、2番目の中庭は、ここでしか出会えない魅力を持った特別な中庭です。
交通
コロンボの中心街から、車で10分程度。
参考文献
Geoffrey Bawa the Complete Works (David Robson, Thames & Hudson, 2002)
Upload
2008.06 日本語版の文章、写真+英語版の写真
Update
2008.09、2010.06 写真の変更
2018.01 日本語版の写真+英語版の文章、写真
Copyright (C) 2010 Future-scape Architects. All Rights Reserved.
無断転載は、ご遠慮いただくようにお願いいたします。