ソグネフィヨルドが終わり、峡谷に切り替わり、両側に迫る山の間を縫って行くと、谷間の小さな盆地に、ボルグンの教会が現れます。
ウルネスの教会と同じく、スターブ教会の一つで、1150年に建てられました。中世のスターブ教会の特徴をもっとも残す例として、他のスターブ教会の改修や再建の際の規範となり、また、19世紀末に、ノルウェーを中心として流行したドラゴンスタイルの建築のモデルともなったそうです。
中世以来、一切改変されなかった訳ではなく、1868年に近くに新しい教会が完成して、用済みとなった後、1877年に、ノルウェー遺跡保存協会が購入し、宗教改革後に改修された部分を取り去り、中世のオリジナルの姿に戻した結果です。
ウルネスの教会と同じように、身廊に内陣とアプス(後陣)が取り付いたプランですが、その外壁の全周に歩廊が回っているところが、ウルネスとは異なっており、腰板を嵌めた歩廊により、立体の陰影も繊細になっています。 西と南北に、歩廊からポーチが飛び出していますが、実際の入口は、西と南だけで、北側は、建物のシンメトリーを強調するため設けられた意匠のための意匠のようです。
圧倒的なのが、何重にも折り重なる屋根。急勾配で上から下に広がって行く屋根は、シングル葺きの小さなピースの板片を水の飛沫に見立てた滝のようです。そして、その滝の流れから頭を出すように、屋根の妻の軒先に、龍頭が立っています。
壁には、蛇や動物の文様が彫られ、どこかにルーン文字も書かれているとのこと。そういう一つ一つが、ノルウェーの土俗的な空気を、建築の上にまとわせて行きます。
今は、屋外建築博物館的に整備されたため、却って、場所の記憶が曖昧になっていますし、オスロからソグネフィヨルドに抜ける国道が脇を通り、直行バスのルートともなっているため(トンネルの新ルートが開通して、現在は旧道となったようです)、地理的閉塞感は薄れた感じもありますが、昔は、フィヨルドが果てた、その先の、地理的などんづまりに近い場所だったのでしょう。
ヨーロッパの「果て」のノルウェーのさらに「果て」、という場所の持つ力を感じさせる建築です。
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交通
ソグネフィヨルドの交通の要所Lardalからバスで40分、Sogndalからバスで1時間半。
リンク
ボルグンの教会
宿泊施設のリスト
参考文献
"Stave Churches in Norway" (Gunnar Bugge, Dreyer, 1983)
"The Norwegian Stave Churches" (Leif Anker + Jiri Havran, ARFO, 2005)
"The Norwegian Stave Churches - A guide to the 29remaining stave churches" (Jiri Havran, ARFO)
"Norwegische Stabkirchen" (Eva Valebrokk + Thomas Thiis-Evensen, Boksenteret, 1993)
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2004.01 日本語版+英語版
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2010.06 写真の変更
2018.01 文章、写真の変更
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