新潟市郊外に立つローコストの自動車整備工場。ユーザー向けレンタルガレージも兼ねています。
郊外には、色や形の奇抜な施設が次々とできる一方で、単調で、灰色やベージュの建築もたくさんあります。ここでは、奇抜さ競争に巻き込まれず、かつ、単調でもない郊外型建築をつくろうとしました。小さな違いの積み重ねで、「どこか違う」建築をつくること、具体的には、つくり方をいろいろなレベルで反転させました。
外形は、認証工場のために法で定めた最低のボリューム。そういう機能的な形が、郊外型建築の基本と考え、黒い外観は、郊外では意外と少ない色で、景観の地となる色として選びました。
ふつうの建築と違い、各面の窓は、面する外部の様子に合わせ、高さ、割付が変わります。異なる4つの面が角でぶつかります。
例えば、交通量の多い道路に面する南面は、車の速度に合わせた大ガラス窓です。道路端に、大きなテレビスクリーンを置いたような単純さで、往来する車にアピールします。西面は、洗車場に面し、歩き回る客のスケールに合わせて、高さを抑えました。
郊外型建築の多くは、内部を、ベージュや無彩色で仕上げていますが、ここでは、正反対に、強い色を導入しました。色は、中央のガラス間仕切を境に、橙から水色に切り替わります。工場内を動くたび、色の境界をまたぎ、つねに、色による反転を意識します。
少人数で運営するため、管理しやすさがクライアントの希望でした。ラウンジのデスクから、外のコイン洗車場を監視できるように、壁が、洗車場に向けて放射状に開き、その間が、待合スペースになっています。壁の両側は、鏡を貼り、死角で見えない洗車場の一部も、鏡に映ります。
待合スペースは、実像と虚像、2色の色が出会う場所となります。「反転」の風景が、ここで、一つに結ばれ、待合スペースは、工場の「要」となります。
所在地 新潟県新潟市
延床面積 251.43 m2(76.1坪)
構造設計 大賀建築構造設計事務所
設備設計 マイ設備設計
設計協力 加藤弘行、田村新、Apartment、田中理絵子(遠藤照明)
家具 Apartment、天童木工PLY
施工 小金住建
展覧会・芸術祭
2009.09. Antipodas(対蹠地):La Architectura Japonesa desde Miradas Argentinas (アルゼンチンの視点から見た日本の現代建築)(アルゼンチン建築博物館、ブエノスアイレス、アルゼンチン)
2010.08. Observation on Japanese Architecture(日本の建築に関する所見)(アトランタデザイン美術館、アトランタ、米国)
掲載誌、書籍
2008.12. Design and Dialogue (遼寧科学技術出版社、中国)
2009.09. Times Newspaper (London, United Kingdom)
2009.10. Antipodas : La Architectura Japonesa desde Miradas Argentinas (Argentina)
2010.08. Architecture Zone(RIHAN CC、中国)
2010.07優秀建築選2009(JIA,日本)
2011.08. 現代日本の建築 vol. 4(Art Boxインターナショナル、日本)
2014.03. Designers File 2014(ワークスコーポレーション, 日本)
ウェブマガジン
2010.03. Archello
2010.04. e-architect
2010.06. Architecture News Plus
2010.12. architizer
2011.07. AECCafe
2011.11. designboom
橙色の待合スペースからギャラリー、水色の工場へ色が切り替わる。鏡に映るガレージの虚像と実際の風景が重なり、さまざまな風景が出会う。
南側外観。夕方になると、大きなガラス面の開口部が明るく光り、工場の奥まで、よく見える。撮影:鳥村鋼一。
南側外観の夕景。南面の大きなガラス面が光り、道路端に大きなテレビモニターを置いた印象をつくり、施設の告知効果を生む。撮影:鳥村鋼一。
昼間の南側外観。道際は接客スペース、その向こうは、1階が待合、2階が事務所。ガラス間仕切り越しに、奥の工場や空。撮影:鳥村鋼一。
南西から見る外観。南は、国道の車の速度を意識した大ガラスの開口部。西は、歩いて、工場と洗車場の間を行き来する人のスケールに合わせ、窓の高さを抑えて、ドアもこまめに設けている。
1階ラウンジ。窓面と反対の北側は、1階が待合スペース、2階が事務室に接する。撮影:鳥村鋼一。
ラウンジから入口と待合スペースを見る。待合は、敷地奥の洗車場が見えるように、洗車場に向かって放射状に開いている。撮影:鳥村鋼一。
1階ラウンジ。橙色は、秋から春先までどんよりした天気の続く新潟の気候に配慮して、温かく感じられる色として選んだ。
待合スペースから、ラウンジのテーブルと、Antonio CitterioによるSpoonスツールを見る。
1階ギャラリーから待合スペース経由で、ラウンジを見る。放射状に開いた待合スペースを逆から見る。撮影:鳥村鋼一。
ギャラリーから待合スペースの昼間。正面が、ラウンジ。大きさや高さの違う特注の丸椅子を、客用の椅子や販売する工具の展示台として利用。
ギャラリーから待合スペースの夜の様子。放射状の壁は、両側とも鏡ですが、右手の一部がガラスとなり、その向こうに、展示スペースが見える。
(左)1階ギャラリー(機器置場)の様子。撮影:鳥村鋼一。(右)スチールで可愛らしくつくった洗面台。ギャラリーのアイストップになっている。
ギャラリーのトップライトを見上げる。屋根の梁を挟み、下側に、ツインポリカーボネート板を入れ、断熱効果を高めている。
北側から見る工場スペース(ガレージ)。ギャラリーとの間のガラス間仕切りを境にして、色が水色に切り替わる。
ガレージは、3台の作業スペースからなり、各作業スペースの幅、奥行、高さは、認証工場の基準の最低限の寸法となる。
2階の事務室の様子。両側のガラス間仕切を通して、他の空間とつながり、明るい光が入って来る。撮影:鳥村鋼一。
「一般的な郊外型建築」と「新潟の自動車整備工場」の対照表