新潟市中心部近くにある、築25年の木造事務所を、美容院に改装したプロジェクト。
改装に際し、美容院に付き物の「鏡」を積極的に利用し、単純な空間に複雑さを持ち込み、室内と屋外を近づけようとしました。
中央に大鏡を、室内の随所に、鏡やアクリルミラーを設置しています。床と天井を、反射度の強い全艶の塗装で仕上げています。
外壁の複雑な窓は、アットランダムではなく、建物と関わるルールに則り、切り取っています。
水平方向は、既存窓の位置を踏襲し、 垂直方向は、建物に固有の6つのレベルを元に、設定しました。高さにより見える風景も変わって来ます。
室内では、窓越しの風景の実像と、鏡や床、天井面に映り込んだ虚像が重なります。複雑な窓により、光の入りも変化に富み、それが鏡で乱反射されます。
室内に屋外が入り込んだ雰囲気が生まれ、実際以上の広がりをもたらします。自然光や戸外の心地よさを希望した施主に応えた形となっています。
屋外から見ると、窓で複雑に切り取られた室内の風景が、鏡に映った虚像によって分断され、そこに、鏡の向こうの実像が重なります。
重なり合いの複雑さで、室内の気配は増幅され、実際以上の活気が漂います。客の少ないときにも、店内が閑散と見えない効果を期待しました。
所在地 新潟県新潟市
延床面積 112.37m2(34.0坪)
構造設計 大賀建築構造設計事務所
設備設計 マイ設備設計
設計協力 加藤弘行、田村新、Apartment、田中理絵子(遠藤照明)
家具 Apartment
施工 小金住建
新潟市中央区上所中1-6-4
受賞
2007.05. リフォーム&リニューアルコンテスト優秀賞
2008.10. 東京建築賞優秀賞
掲載誌、書籍
2007.08. 月刊リフォーム平成19年8月号
2008.09. コア東京平成20年9月号
2008.10. 1000 Interiors(遼寧科学技術出版、中国)
2009.03. コア東京平成21年3月号
2009.09. 優秀建築選2008
2010.06. 100% Classical Cases of Interior Design(RIHAN CC、中国)
2012.07. Salon.com(Art Power、中国)
2012.07. Doorplate Design(Art Power、中国)
ウェブマガジン
2010.06. Architecture News Plus
2011.11. designboom
夕景。JIGSAWという切り文字のサインが外と室内に2重にあるのが見える。
複雑に切り取られた窓の向こうには、外の緑の風景を映し出した大鏡が見える。その大鏡の間に、実際の室内の風景が見える。 いくつも実像と虚像が重なり合うと、人がいないときにも、不思議にざわざわとした感じがあり、閑散とした感じがない。
外観は、改修前の窓のリズムを改修後も踏襲。水平方向は、既存の窓の位置に合わせ、垂直方向は、既存の建物の持っていたさまざまな高さに合わせている。以前の記憶を持ちながら、新鮮な印象を与え、街並を誘導してい行くようなデザインを行おうとした。
改修前(上段)と改修後(下段)での外観の変化。改修前のリズムを踏襲しながらも、より活き活きとした表情が生まれる。
正面から見た昼間の外観。
暗くなり、室内の灯りが、街路に漏れ出す。
エントランスから見る室内風景。スロープの突き当たりが受付。右手には、外壁の窓がさまざまな高さに開き、左手の鏡に、その風景が映る。
受付から見る室内の様子。午前中、朝の光は、さまざまな高さの窓から差し込み、それが鏡や、全艶の天井、壁に反射し、複雑な様相をつくる。
受付から見る午後の室内の様子。午前中とは、様子が一変する。時間により光が移ろい、戸外にいるようなリラックスした雰囲気が生まれる。
室内から外壁の窓を見ている。さまざまな高さの窓からは、見える風景のタイプも変わり、光の入り方も、複雑に変わる。
差し込む実際の光、鏡に映る風景や光の虚像、その向こうの室内やテラスの実像の風景が重なり合い、複雑な状況が生まれる。
鏡により、室内に屋外が入り込んだような印象をつくる。
鏡により、室内に屋外が入り込んだような印象をつくる。
同じ場所から同じ角度を見るが、時間により印象が様変わりする。左側は、午前中の光、右側は、午後の光。
待合スペースの様子。
奥のリラクゼーションスペース。自然の光にあふれた室内の奥に、一室だけ、それまでの空間から反転したような空間が現れる。
リラクゼーションスペースの室内は、カーテンに囲まれ、裏に設えた照明により、カーテンがぼんやりと、柔らかく輝き出す。
裏側から照らし出す光により、カーテンの素材感は弱まり、光自体が素材のような印象をつくり出す。
リラクゼーションスペースの天井を見上げる。