青森のお祭り:青森ねぶた - 1
(青森、青森、日本)

青森のねぶたで、もっとも迫力を感じたのが、男衆に引かれたねぶたの山車が、猛スピードで、客席に向かって、走ってくる瞬間でした。

重さ4トンあるねぶたを、10人ほどで引くのは、ふつうでさえ大仕事なのに、幅員が30m近くもある国道を、全速力で、大声を出しながら走って行きます。正確には、国道の車道際から、反対側の際まで、斜めに突進し、客席にぶつかる直前で、ふんばってねぶたを停止させたかと思うと、一息付く間もなく、90度方向転換して、また、反対側の際に向かって行くから、片道45mの短距離走の繰り返しです。

巨大な山車と男衆のスピードが、すごい勢いで、客席に飛び込むように向かって来るのを、真っ正面に立って受け止めるだけでも、アドレナリンが上昇しますが、歩道に張られたロープの直前で、ぎりぎりで山車が急停止した瞬間、彼らのとてつもないエネルギーが、勢い余って、客席で見ている観衆に降り掛かって来るようで、こちらまでエネルギーに満たされます。まさに元気をいただくとは、このこと。

8月の最初の一週間、青森の町は、ねぶた一色に染まります。会期中、訪れる観光客は300万人、ねぶたに参加する20組のメンバーも、各組数百人という巨大なお祭りです。昼をすぎれば、駅前通りは、行き交う人であふれ、巡行ルート沿いでは、観覧席の設営に大忙しです。

午後7時、まだ、明るさの残る空の下、祭りが始まります。これから3時間、中心街を一回りするように、ねぶたが巡ります。

ねぶたの先頭は、囃子方。大太鼓が先導して、その後ろに、笛とじゃんがらと呼ばれる手振り鉦。笛の調べは、どことなく哀調がありますが、太鼓とじゃんがらの刻むリズムが、切れがよいので、かなり力強く響きます。気が付くと、自分の身体も音に合わせて、揺れていました。

そして、次に登場するのが、真打ちの山車。歌舞伎や故事に基づく題材でつくられた造形が、暗くなるに連れて、生命を吹き込まれたように、活き活きと浮かび上がります。そこにスピードが加わるから、飾りの一つ一つが自分で動き出すようです。

そして、最後に控えるのが「ラッセーラー」の掛け声でおなじみのハネト。頭に鮮やかな花笠をかぶり、たすき掛けした浴衣から、青い腰巻をのぞかせた一団が、片足跳びではね狂います。振付は、それほど難しくも、型があるものでもなく、とにかく、エネルギーを放出するためのような踊りです。

途中、山車が詰まるたび、小休止をするものの、3時間、片足跳びで跳ね続けるんですから、とてつもない踊りです。3時間、片足で跳ね続けられますか?足を吊ってしまいそうです。正直言えば、実際、祭りの終了時刻近くになると、ハネトもゼーゼーしていました。若者が引き手の山車に比べれば、ハネトの年齢層も性別も広がりますから、当然ですが、見ているこちらとしては、終わりまで、狂いに狂って、エネルギーを持続してほしかったところ。ぜーぜーして疲労困憊している人を見ると、なぜか見ている側にも疲れが伝染してしまいますから。引き手にもらったエネルギーを、祭りの最後でハネトにさらわれた感じで、ほんの少しだけ残念でした。

それでも、テレビのニュースで断片的に見ていたとは言え、目のあたりにする青森ねぶたの迫力は並みではありません。厳しく長い冬の続く青森に、勝手に暗いイメージを重ねがちですが、ねぶたを見ると、その強さに、先入観を改めます。第二次世界大戦の終戦とともに訪れた、明るく自由な社会の象徴だった映画「青い山脈」の舞台も青森ですから、青森とは、実は「陽」の地であり、長い冬に閉じこめられた「陽」が、表に出ると、とてつもないパワーになるのかもしれません。

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交通
青森駅から徒歩7、8分。

リンク
青森ねぶたオフィシャルサイト

青森市役所
青森市観光情報サイト

青森県観光情報サイト

宿泊施設のリスト
青森市旅館ホテル組合

参考文献

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青森ねぶた 巡行

Photo by Daigo Ishii