青森のお祭り:弘前ねぷた - 1
(弘前、青森、日本)
弘前のねぷたに来て、夜の本番だけで、満腹になったとしたら、こんなにもったいないことはありません。
弘前のねぷたの極意とは、担い手の中心が、町内会ということ。中心街だけでなく、郊外からもやって来るその数、2011年は82組。全組が毎日参加する訳ではないのですが、僕の見た日に限っても63組。驚くほどの数です。
本番の開始時刻は、夜7時ですが、通(つう)向けのほんとうのスタートは、午後2時あたり。
出発点の弘前公園を目指して、そこら中の道に、ねぷたが出現します。車に牽引されているものもありますが、人力で引いて行く組も多く、ということは、至るところで、渋滞が発生。車に支配されるようになった町に、ねぷたの日だけは、人間的なリズムが戻って来ました。
午後5時、弘前公園の回りは、ぎっしりと立ち並ぶねぷたで、埋め尽くされます。大通りの歩道や裏道には、シートが敷かれ、巡行の打ち合わせをしている組もあれば、出陣前の腹ごしらえをしている組もあります。仕切り役の男性が子供たちに指示を出しているかと思えば、高校生が、長老に歯切れよく挨拶していたりと、世代を超えた老若男女のコミュニケーション風景が垣間見えて、弘前って、きっと、住民の絆がしっかりとしているのだろうな、とうれしくなります。
ねぷたの背景が凝縮されて現れたようなこの時間と空間こそが、弘前ねぷたの真髄なのです。
そして、各組の支度をのぞき、ねぷたの舞台裏を観察できるのもこの時間の楽しみ。
先ずは、ねぷた絵の鑑賞。中から照らし出し、迫るような夜の表情とは対照的に、日の光の下で見るねぷたは、思いの外、穏やかです。本番とは違い、一つ一つの絵を細かく鑑賞でき、弘前のねぷた絵の特徴や、文様のセンスを理解して行きます。
蓋を上げて、調整中のねぷたがあったので、内部をのぞくと、古錆びた骨組に新しい材を継ぎ足したものもあれば、鉄骨の骨組にエキスパンドメタルの内部足場を持つものもあります。内部は、意外と大きな空間で、出陣前の食事用に持ってきたグリルや調理器具が置かれていました。軽トラックぐらいの広さはあるので、これなら、ねぷた期間外は、簡単な引っ越し用大八車に転用できそうだな、と思ったりして。灯をともしたねぷたの引っ越しサービスも、楽しそうです。
小さな太鼓ねぷたの足元に掛かっていたすだれが、少しめくれています。中に組み込まれていたのは、冷たい水を張った大きなボックスで、たくさんのペットボトルが浮いていました。水分補給まできちんと装置化しているのです。
そうこうしているうちに、空も少し暗くなり、少しずつねぷたに灯が入ります。気分が高まって来ました。出陣までもうすぐです。
交通
弘前駅から弘前公園の間。
弘前公園:弘前駅から西目屋、相馬、岩木方面行きバスで20分、市役所前公園入口で下車、または、土手町循環バスで20分(日中は頻発)、市役所前下車、すぐ。
リンク
弘前ねぷた参加団体協議会
弘前市役所
弘前観光コンベンション協会
弘前総合情報RIng-O Web
宿泊施設のリスト
弘前市旅館ホテル組合
参考文献
"弘前ねぷた速報ガイド2011" (路上社, 2011)
"図説青森県の歴史" (成田稔・長谷川成一, 河出書房新社, 1991)
弘前ねぷた参加団体協議会
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