津軽半島へ:
カッチョの集落:脇元、磯松 - 2
(五所川原、青森、日本)
脇元、磯松、どちらの集落とも、家の壁から少し離して、1階の窓上から庇ぐらいの高さの板塀が続きます。基本的には、風の来る海の側に付け、家によっては、さらに左右につながって行きます。風とは反対の道路側にまで回している家もありますが、高さはかなり低く、これは、3方だと中途半端に見えるため、きれいに囲んで完結させた、景観デザイン的発想でしょうか。
この脇元や磯松のある海岸べりの家々のカッチョは、風が運んで来る砂利や波から、家を守るための仕掛けだそうです。地吹雪を防ぐためのカッチョとなる、内陸の藤枝とは、少し背景が違うのです。
脇元、磯松のカッチョは、木で作った骨組に、幅10センチほどの長い板を、隙間を少し開けて、打ち付けます。風が強すぎるため、隙間を設けないと、風圧で塀が持たないのです。内陸の藤枝では、骨組には、鉄パイプを使うところも多いのですが、潮風の吹き付ける海沿いの脇元と磯松では、見掛けません。
板に使われるのは、ヒバや松。最近張り直したお宅を見ると、白木の明るい木肌が残っていましたが、潮風に晒されるので、板の風化も早く、少し時間が経てば、肌はすぐに灰錆び、そして、あらくれ立って行きます。
寿命は、5.6年というところで、店で購入した板を自分で取り付けますが、お年寄りのお宅や、住民の去った家では、その交換のサイクルも途切れ、さらなる風化で、板の輪郭もぼやけ、平たかった板は、もはや浜に流れ付いた流木の趣です。
これだけ過酷な気候の下では、隙間風の入ってしまう古い住宅のつくりは、若い世代にはなじめないし、伝統的な板張りの外壁では、強い潮風で、寿命が短くなります。新建材の住宅が増えている背景でしょう。残念であり、仕方がないことでもありますが、そんな変化の中でも、家を囲むカッチョだけは、板張りのまま生き残っていることが、驚きです。
家とは違い、骨組は、潮を含んだ過酷な気候の中に露出せざる得ません。木材以外選択肢がなく、そうすると、必然的に、木材の骨に止める風除けも、板に行き着くのでしょうか。
交通
五所川原駅からバスで1時間半(1日7本)、脇元、磯松で下車。徒歩すぐ。
リンク
市浦商工会
宿泊施設のリスト
十三湖周辺の宿
参考文献
Upload
2018.01 日本語版の文章、写真+英語版の写真
Update
Copyright (C) 2010 Future-scape Architects. All Rights Reserved.
無断転載は、ご遠慮いただくようにお願いいたします。