津軽半島へ:
カッチョの集落:脇元、磯松 - 1
(五所川原、青森、日本)
津軽半島は、冬の風の名所。冷たい海風が吹き寄せ、陸に上がると、地吹雪に変わります。今でこそ、ストーブ列車から見る地吹雪や、昔の格好で地吹雪を体験するツアーにより、冬の観光資源として開発されつつありますが、本来は、ここで暮らすことを脅かし、厳しく辛い冬をもたらすものでした。
この地には、その海風や地吹雪を克服するために、カッチョと呼ばれる板塀で囲まれた集落が今も現役です。
最初にご紹介するのは、冬、海を渡って来たばかりの冷たい風が吹き付ける、津軽半島西海岸の二つの集落、脇元と磯松です。
2つの集落は、1キロほど離れて、隣り合いますが、近い割りには、印象が違います。
元々、この付近の海域は、鰊の豊かな漁場だったため、脇元は鰊漁で栄え、鰊御殿も建っていたほどの漁師町でした。しかし、昭和20年代に入り、漁場が北上して北海道に移ると、漁業は衰退し、今は、漁港はあるものの、ほとんど使われていない状態です。
この地での漁業の展望が消えた後、漁師の一部は、北海道で漁に従事するヤン衆(雇い漁夫)として生計を立て、中には、北海道に移住した人もいたそうです、そんな中、脇元での生活の糧は、塗り壁に混ぜる海藻類を採ること(おそらく珪藻土)と、農業(主に、米とトマト)に移って行きました。
それでも、今でもなお、脇元には、漁村集落の空気が残っています。浜の一部は、船を引き上げるようになだらかに加工され、浜際、ぎりぎりまで、家が押し寄せています。地形に平坦な奥行がないこともありますが、浜と接触する距離をできるだけ取ろうとしたかのように、集落は、細長く1キロ以上も伸び、結果として、集落全体が風に向かうような場所となりました。そして、その風に対する仕掛けとして、浜を縁取るのが、カッチョです。
磯松は、平地が、扇形に内陸に広がっています。土地に余裕があるためか、浜に直に向かい合う家は限られ、内陸に向かって、幾重にもカッチョを持つ家が重なって行きます。その家の重なり自体が、もう一つのカッチョとしても機能します。
家が割と密集して、おにぎり型の集落をつくり、その周りに農地が広がって行く様は、脇元とは対照的に、農村的な印象が強くなります。集落と浜の間に点々とある小さな建物は、漁撈小屋のように見えましたが、住民の話では、家の蔵として利用しており、漁業には関係ないとのことでした。
交通
五所川原駅からバスで1時間半(1日7本)、脇元、磯松で下車。徒歩すぐ。
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