青森の森を抜けて - 八甲田から十和田へ:八甲田ホテル - 2
(青森、青森、日本)
居心地のいいホテル、それが、宿泊しての印象。
いちばんの魅力が静けさ。外界から隔絶されたような環境、音への配慮のなされた館内、不用な来訪者は少なく、スタッフも必要な言葉しか掛けません。
元々、共用施設もレストランだけで、大抵のホテルに付き物の、宴会場や会議施設もありません。そして、ホテルが開業から一環しているのは、広告を一切出さないこと。広告の効果で、玉石混交の客が来るより、口コミで、質のいい客が広がればいいという方針だそうです。だから、来訪者も限られるのです。
皆、青森出身者というスタッフは、同じ経営の酸ヶ湯温泉と八甲田ホテルの間を、異動しているそうです。湯治客のいる酸ヶ湯温泉から、高い料金の八甲田ホテルまで、あらゆるタイプの客を接客することで、耐性ができるのでしょう。どのスタッフも、人柄は穏やかで、気遣いも仕事もきちんとしているのに、都会のホテルのように、いたずらにきびきびとふるまうでもなく、静かで、過剰なところがありません。大きなチェーンのホテルとは違う、そのスタッフの佇まいも、居心地の良さとなります。
そして、ここも、また、温泉が楽しみ。源泉からの距離があるため、加温していますが、白濁せず、薄い緑色の硫黄泉で、匂いは弱く、穏やかな湯ざわりです。この湯に入った後、外の雪の中を散歩しましたが、温かさがいつまでも身体の芯に残る湯でした。
温泉と言えば、もう一つ、ホテルの飛び切りのサービスがあります。宿泊客を、朝7時から夜10時まで、好きな時間に、酸ヶ湯温泉(と八甲田スキー場)に無料送迎すること。ホテルと酸ヶ湯の両方の温泉を味わえ、温泉好きには堪りません。朝晩、それぞれの湯に入り、効能からすると、入りすぎでしたが、止められません。ホテルから酸ヶ湯温泉を訪れると、 下界に戻った気分になるのが不思議で、そのぐらい、ホテルでの滞在が、デトックスになっていたのでした。
静けさを堪能し、温泉を満喫した後は、食事の時間です。地のものを主にし、日本料理のように、素材の味を活かした料理を、大きなガラス越しに、森の風景を愛でながらいただきます。食事に付いて来るパンが、あまりにもおいしかったので、自家製ですかと尋ねると、パリから冷凍のパンを輸入しているとのこと。思い掛けない贅沢に驚かされました。
そして、客室や浴場に用意されている八甲田の伏流水のおいしさも忘れられません。まさに森の恵み。
八甲田ホテルは、青森の森にふさわしいホテルでした。
交通
青森駅からバスで80分。
リンク
八甲田ホテル
宿泊施設のリスト
青森市旅館ホテル組合
参考文献
"住宅建築1992年2月号" (建築資料研究所, 1992)
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