奄美の集落:与路島 - 1:与路島航路
(瀬戸内、奄美群島、鹿児島、日本)
7月27日、午前9時半、奄美大島、古仁屋港。晴れ渡った空、動かない風、すでに白昼のようにきつい日差し。太陽にさらされて熱溜まりになった埠頭に、与路島行きのフェリーが停泊していました。こじんまりとした船体には、せとなみの文字。
奄美大島の南端の古仁屋港から、1日1便のフェリーで2時間弱。離島の離島のような場所です。東西に細く伸びる大島海峡を挟んで、古仁屋と向かい合うのが加計呂麻島で、その加計呂麻島から、請島水道を挟んで、請島と与路島が寄り添います。一度、外洋の太平洋に出るせいか、欠航の多い航路です。
20数年前、3日船待ちをしたものの、結局、船は出ず、あきらめました。今回も、週に一度台風の襲来するシーズンでしたが、次の台風がたまたま停滞したため、穏やかな船日和となりました。
フェリーは、85トンで、定員60人。奄美大島から与路島の西を通って徳之島に向かうフェリーが、最大8000tで、700人乗りですから、比べれば、子供どころか孫のような船。船内は、離島の命綱となる荷物スペースが半分を占め、船室も甲板もコンパクトです。船室は、強い日差しにカーテンを下ろし切って暗く、がんがんに冷えすぎた冷房に、30人ほどの乗客の大半は、出航前から、毛布を掛けて、寝入っていました。
午前10時、古仁屋を出航した船は、奄美大島を左に、加計呂麻島を右に見ながら、緑の風景の間をゆっくりと進んで行きます。海峡と言っても、両岸は近く、穏やかな河口を下るようですが、急峻な奄美の地形が海の中まで深く続き、すでに、水の色は、外洋の深い藍色に染まっています。
15分後、太平洋に出た船は、南に向きを変えました。波も荒くなり、時々、大波に乗り上げます。いっそう濃く深くなった海に、波に翻弄される小振りな船という取り合わせは、不安をかき立てます。回り込んだ加計呂麻島の風景も、ごつごつとした岩がちの、波に浸食された男性的な断崖に切り替わります。やがて、船は西に回り込み、請島水道に入ると、視界に、請島と与路島が現れました。今日は、その向こうに徳之島も霞んでいます。航路の終着地が見え、ようやく不安も和らいで来ました。
出航してから45分、最初の寄港地は、請島の請安室港。底知れない藍色の海が、突然、美しいコバルトブルーになり、船は滑るように、凪いだ珊瑚礁に入って行きます。集落は、木々に隠れています。埠頭には、数台の迎えの車も待ち、数えてみると、乗客の大半、21人が下船して行きました。請島の人口は、与路島よりは少し多い程度の100人強で、船員も「今日はなんでこんなに多いのかな。」と不思議がるほど。さらに、請島の海岸に沿って10分、次の寄港地は、請島の池地港。珊瑚礁に長く突き出した埠頭の奥の集落は、こちらも木々に覆われ、かすかに屋根が覗くだけです。5人が下りると、乗客は残り5人となり、船内は急にひっそりとしました。
請島を離れ、海は、再び、深い藍色に戻ります。与路島の手前、小さなハンミャ島が近づきます。天然の白砂の急斜面で、そり遊びの楽しめるというハンミャ島を越すと、与路島が少しずつ鮮明になって来ます。緑で鬱蒼とした山、ゆるやかに弧を描く入江、海岸を縁取る防潮林。梢の間からちらちらと覗く屋根が、強い日差しに白く光っていました。船は大きく汽笛を鳴らすと、テトラポットで守られた堤防の切れ目から、珊瑚礁を掘削した港に入って行きます。コバルトブルーの海に、海岸から突き出た殺風景な埠頭が伸び、コンクリートの待合所がぽつんと立っています。船員がロープを投げ、船がゆっくりと接岸します。
午前11時45分、20数年掛けて、ようやく与路島に辿り着きました。
交通
名瀬中心街にある「しまバス本社前」から古仁屋行きバスで70分(1日10本程度)、古仁屋海の駅で下車。
古仁屋海の駅に接する古仁屋港から船で50-100分(1日1-2本)、与路港下車。
宿泊施設のリスト
与路島の宿泊施設
参考文献
Wikipedia
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与路島航路 せとなみ
与路島航路 古仁屋
与路島航路 加計呂麻島
与路島航路 請島と徳之島
与路島航路 請島
与路島航路 ハンミャ島
与路島航路 与路島
Photo by Daigo Ishii