奄美の集落:与路島 - 3:サンゴ垣の景観
(瀬戸内、奄美群島、鹿児島、日本)
与路島の目玉は、サンゴ石の石垣の続く美しい集落。奄美諸島でも、もっともすばらしいものの一つです。元々は、いろいろな島に同じようにサンゴ石の石垣があったのでしょうが、ブロック塀の登場とともに、かなりが置き換わり、これだけの規模が残るのは、与路島のみとなりました。
通常サンゴの石垣は豪農など裕福な人がお金をかけてやるものでしたが、与路島では、すべて結ワクでやる習わしがあり、サンゴの採集は住民総出。これによって豪農だけではなく一般の島民も作ることができたため、これだけの規模のサンゴの石垣が生まれたようです。さらに、現在は、各種事業によってサンゴ石垣の修復作業も進んでいるため、美しい家並みを保っています。
サンゴ垣の高さは、1.2mから2.2mぐらい。家の外壁に接して立つサンゴ垣は、比較的高いように見え、低めのサンゴ垣は、庭先や農地に多いように見えました。台風対策として、家の回りは高く、日影にならないように農地の回りでは低いのかもしれません。サンゴ石にもバラエティーがあるのを、うまく選り分けしたのか、扁平なスレート板状のサンゴ石を積み上げた垣もあれば、握り拳状のサンゴ石を積み上げた垣もあります。もちろん、その混在も。時間が経って見える垣は、雨で黒ずんでいますが、上部の数段だけが、切り出したばかりのように白く輝いている垣もあります。サンゴ石が集まるたびに、新しく積み上げ、台風対策を万全にしているのかもしれません。
積み上げるとできる空隙は、強風は防ぎながら、微風を通し、湿気が籠るのを防ぐ優秀な環境装置である一方で、ハブが棲み家として好む場所でもあります。そして、植物にとっても、寄生したり、まとわりつくのに適した床となっています。さまざまな種類の地被類の寄せ植えのようなサンゴ垣もあれば、植物の気根が入り込んでサンゴ垣の存在を圧倒しているものもあります。いっそうハブの好む環境が出来上がっている訳です。
交通
名瀬中心街にある「しまバス本社前」から古仁屋行きバスで70分(1日10本程度)、古仁屋海の駅で下車。
古仁屋海の駅に接する古仁屋港から船で50-100分(1日1-2本)、与路港下車。
宿泊施設のリスト
与路島の宿泊施設
参考文献
"日本歴史地名大系 (47) 鹿児島県の地名"(平凡社,1998)
"角川日本地名大辞典 46 鹿児島県"(「角川日本地名大辞典」編纂委員会,角川書店,1983)
"鹿児島県の歴史散歩"(鹿児島県高等学校歴史部会,山川出版社,2005)
"郷土資料事典 鹿児島県"(人文社,1998)
"島嶼大辞典"(日外アソシエーツ,1991)
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