奄美の集落:与路島 - 5:生物多様性
(瀬戸内、奄美群島、鹿児島、日本)
蝶がいる!鳥がいる!ヤドカリがいる!
与路の集落を散策していると、小生物に遭遇する確率の高いこと高いこと。
空き家が多いと言っても、住んでいる人はいるし、人の往来も時折あるのですが、最盛時に比べて減少した人の密度が、生物の活動を脅かさない程度となり、生息に好都合となったのでしょうか。生物多様性の高い集落です。日本だけでなく、外国も含めて、これまで訪れたさまざまな場所の中で、建て込んだ集落内で出会う生物の豊かさではピカ一ではないでしょうか。
通りには、島民が思い思いに植えたハナミズキ(外来種)やクチナシ、芙蓉、ブーゲンビリヤ(外来種)など、夏の花があふれ、足元には、可愛らしい花を咲かせる野草らしきものが自生しています。その蜜に引き寄せられるように、黒や白の大きな蝶が目の前を飛び交います。集落の中で、こんな間近を何匹もの蝶が横切るというのは、なかなかありません。
浜際には、4ー5メートルに大きく育ったアダンの防潮林が続き、複雑に分かれた枝に、細く伸びた葉が覆い重なり、その深緑色の地に、田中一村の絵でおなじみの、橙色に熟したアダンの実が映えます。集落内部には、フクギを初めとした大きな木々が茂り、遠くから眺めると、森の集落です。その環境が、鳥を呼び寄せ、朝夕は、澄んださえずりが、集落に響き渡ります。
密生したアダンの足元や、海に注ぐ水路沿いの薮には、好物のアダンの落果を求めて、ムラサキオカヤドカリが、土や落ち葉の上を這っています。貝を背負い、橙色を散らした青紫の甲冑のような脚が、がさごそと音を立てながら、落ち葉をかき分けて行きます。とてつもない数が這い回っているため、重なった音は、かなり離れた場所まで大きく聞こえ、小さな生物が集まって、巨大な力を持ちつつある不気味さというか怖さを少し感じました。
そして、ハブ。ハブを見ることはありませんでしたが、植物の床として優秀なサンゴ石の石垣はまた、ハブの居心地の良い棲み家であり、そこに生息しているかもしれないハブを追い払うため置かれた、奄美大島の他の集落では見掛けない数のハブ棒が、間接的に、ハブの存在を暗示しています。
夏の夜、1週間ほどの花季ですが、夜に咲くのが、サガリバナ。甘い芳香を漂わせて、暗闇に胞子のような白い花が浮かび上がります。民宿のすぐ近くにあるのは、大きな1本のサガリバナ。案内して下さった民宿のお母さんには、小学校の向こうの農地の脇にも、サガリバナの並木があるから、行きますか、と言われましたが、叢に近い場所に、ハブの活動時間である夜に行くのは、不安が大きく、止めました。
最後は、地元で取れた食材を中心とした、宿の夕食。刺身の付け合わせのきゅうりが、絶妙な甘さだったので、甘酢に漬けたのですかと聞くと、家の畑で採れた島きゅうりを切っただけとのこと。海と陸の豊かな食材も生物多様性。
交通
名瀬中心街にある「しまバス本社前」から古仁屋行きバスで70分(1日10本程度)、古仁屋海の駅で下車。
古仁屋海の駅に接する古仁屋港から船で50-100分(1日1-2本)、与路港下車。
宿泊施設のリスト
与路島の宿泊施設
参考文献
Wikipedia
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