「獅子の山」を意味するシギリヤは、484年、シンハラ朝の王カッサパ1世が、殺害した父の供養と、弟からの攻撃への防御のためにつくった宮殿の跡です。平野からそびえ立つ200mの岩山の頂に宮殿を、足元には、庭園と町を築きました。
ゲートを入ると、岩山に向かう直線の参道の両側に、「水の庭園」と「岩の庭園」が広がります。「水の庭園」は、参道を挟み、方形の池をシンメトリーに配置しています。雨期には水を湛え、当時つくられた噴水が、今でも水を出すそうです。続く「岩の庭園」は、非対称で不定形の庭です。
山頂から見下ろすと、ヨーロッパのバロック庭園のような、大掛かりなランドスケープが一望でき、シンメトリーと不定形の2つの空間をつなぎ合わせた作庭術は、斬新です。
庭園が終わると、岩がちになり、階段が始まります。階段に沿って、岩の窪みを利用した遺構が残っています。しばらくすると、そんな階段も終わり、工事現場の足場のようなスチール板の通路が宙を飛んでいました。一人通るのがやっとの幅です。
「ここを上るんですか?!」「錆で、腐食していませんか? !」
景色を見る余裕はなくなり、歩くことに集中していると、今度は、回り階段が現れました。
「これも上るんですか?!!」
回り階段は、狭小な現代住宅には許しますが、断崖絶壁のスリランカの遺跡では、遠慮してほしかった・・・。見下ろすような高さに足がすくむ上に、宙に飛び出した階段でぐるぐる目が回って来ました。
上り切ると、そこが、岩の窪みを利用した有名な壁画「シギリヤ・レデイー」です。
スリランカ美術の白眉で、元々は、幅140m×高さ40mにわたって、岩山の壁面に描かれていたそうですが、今は断片が残るだけです。粘土、磁土、椰子の繊維を混ぜたもので下地をつくり、漆喰を塗り上げた上に、樹脂を混ぜた顔料で描いたテンペラ画です。
係員は、スリランカ人だけでなく、中国人や黒人も描かれていると話し、空を舞う天女と書いている本もあります。1800年前に描かれたとは思えないほど、鮮やかでリアルな描写ですが、断片的なためか、大きな絵画の一部というよりは、優れた文化人類学者が描き記した異国の民俗スケッチを思い出しました。
壁画は、実は行き止まりで、再度、回り階段を下りなければなりません。この徒労感は何でしょう?
交通
シギリヤまで、アヌラダープラ、キャンディーから車で3時間ほど。
宿泊施設のリンク
参考文献
世界遺産No.93 聖地キャンディ(講談社、2006)
世界美術全集11 インド・東南アジア(平凡社、1953)
Sigiriya (Senake Bandaranayake, A Publication of the Central Cultural Fund, 1999)
Wikipedia
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シギリヤ (484) - 全景
シギリヤ (484) - 水の庭園、岩の庭園、階段の登り口
シギリヤ (484) - 階段、空中歩廊とその先に回り階段
シギリヤ (484) - シギリヤ・レディー
Photo by Daigo Ishii