古代都市シギリヤ - 2
(シギリヤ、スリランカ)

回り階段を下り、少しほっとすると、チケットチェックがこんな場所!!にあって、その先が「鏡の回廊」となります。レンガの壁を、卵白と蜂蜜と石灰で鏡面に仕上げたものです。

表面に描かれた文字は、落書きかと思いきや、6世紀から14世紀に掛けてシンハラ語で書かれた、シギリヤに関する物語や天女を称える詩で、後を引き継いだ僧院への巡礼者が残したそうです。

よく見ると、英語のアルファベットも書かれているから、最近、落書きした不届き者もいるようです。大体、シンハラ文字の詩も、何百年も経ったから歴史的価値を持ったものの、当時は、落書きだったのではないでしょうか。

さあ、前方に、(仮称)「心臓破りの階段」が見えました。

心臓破りの階段を上ると、そこが「獅子の門」です。頂上と勘違いした人は、ここで甘い期待を打ち砕かれます。行くも地獄、戻るも地獄です。それにしても、往時には、ここまで登るのに、岩場に見え隠れする窪みも利用したようですから、山頂で暮らす王はともかく、家臣は一苦労、二苦労です。

地上からは想像できませんが、煉瓦でつくられた巨大な獅子の足の前には、大きな広場が広がっています。頂上もそうですが、岩山の起伏を読みながら、段状の平坦なテラスに加工したようです。

それにしても、庭園から獅子の門まで、それぞれは、質が高いのに、どうも脈絡がなく、全体性が読み取れません。逆に言えば、スリランカの多くの空間に共通する特徴ですが、場に応じたプロセスプランニングとでもいうべきでしょうか。

全体性がないから劣るという訳でもありません。ルートに沿って、いろいろなエレメントを配置して、時間のリズムを演出することや、平地では平地の、岩場では岩場の、環境の形を活かしてデザインを行うことは、かえって、現代的かもしれません。

一息着いたので、「獅子の門」から始まる(仮称)「心臓+肺破りの階段」に挑戦です。上って上って、やっと頂上に到着。麓から上り始めて50分後のことでした。

1.6ヘクタールにわたる遺構は、思ったよりは幅が狭く、左右はすぐ断崖となり、足元の庭園や、四方の平野が望めます。頂上には、レンガで作った段状のテラスが残るだけで、宮殿の面影はありません。地上の音は届かず、ただ、風だけが響き、寂寥としています。

シギリヤは壮大な夢だったのでしょうか、それとも無謀な夢だったのでしょうか。無謀であるから、無理を呼び、風土や社会に根差せず、長く生き続けられなかったのかもしれません。

そして、幻と消え、破片だけになったとき、現実を超えた一人歩きが始まります。その夢があまりにも無謀だった故に、実際以上に壮大に語られ、往時以上に人々を引きつけるのかもしれません。

雨が降って来ました。同じ道を逆戻りです。つるつるした階段で足を滑らせずに、無事下山できることを願いましょう。

注意
頂上から反対側に下る道があり、違うルートで下山できそうに見えますが、下りて行くと、結局は行き止まり。頂上まで引き返す徒労感といったら・・・。

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交通
シギリヤまで、アヌラダープラ、キャンディーから車で3時間ほど。

宿泊施設のリンク

参考文献
世界遺産No.93 聖地キャンディ(講談社、2006)
世界美術全集11 インド・東南アジア(平凡社、1953)
Sigiriya (Senake Bandaranayake, A Publication of the Central Cultural Fund, 1999)
Wikipedia

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シギリヤ (484) - 鏡の回廊と回り階段(中央写真の奥)

シギリヤ (484) - 獅子の門

シギリヤ (484) - 山頂への道、山頂の宮殿の遺構

Photo by Daigo Ishii