ジェフリー・バワの建築:
カンダラマホテル - 2
(カンダラマ、スリランカ)

熱帯だから成立する、半屋外で、外に開いたオープンスペースやパブリックエリア、それらとは対照的に、客室は閉じたつくりです。

タンクの風景を見る大きな窓は、つねに締め切らざるを得ません。理由は、簡単。猿の軍団が出没するためです。 テラスの先の緑のカーテンを伝って、最上階の5階の部屋にさえ、波状攻撃のように次から次へと現れます。窓の締め方が悪くて、ちょっとした隙間が開いていただけなのに、気が付くと、部屋の中に、侵入。恐るべし猿!すばしっこい猿!あっという間に逃げた猿!

結局、気持ち良い自然の中にいながら、冷房をがんがんに掛けて、自然から隔離されて過ごすことになります。都会のホテルと変わらず、ちょっと残念。 他に解決策はなかったのでしょうか。

パブリックエリアの大半は、コンクリートの床。そこを、ホテルのスタッフは、裸足で歩いています。どんなものかと、僕も試してみました。掃除が行き届いているので、足の裏は汚れません。熱帯の気候では、コンクリートはほんのりと温かく、その優しい触り心地で、足裏の気持ち良いことといったら!友人には、ゲストは裸足で歩かないよ、と言われましたが、この気持ち良さを知ったら、止められません。滞在中、裸足で通しましたが、西欧人がほとんどのゲストには、裸足のアジア人は、単なる下働きにしか見えなかったかも知れません。

ホテルを歩き回っていると、いたることころで、室内に露出した岩と出会います。オープンスペースの傍らにも、エントランスにも、岩がごつごつと現れます。エントランスとサロンをつなぐトンネルは、わざわざ、岩のあるところを狙って、トンネルを通した、というより、岩のある場所を基点にして、2つの位置が決められたとしか思えないぐらいです。

この「旅行の時間」で、スリランカ編がカンダラマホテルに到達するまでに、いくつもの岩と結びついた場所があったこと、ご記憶ありますか。カンダラマホテルの岩を見ていると、岩と結び付いたスリランカ人の場所観が、バワの中にも息づいているように思えて来ました。そして、この後、訪ねるバワの建築で、繰り返し、岩と遭遇することになります。

ささやかなことですが、岩を媒介にすると、古代の遺跡から現代のリゾートホテルまでが一つに結びついて行く、それもまたスリランカを読み解くおもしろさです。

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交通
ダンブッラから車で10分。

リンク
カンダラマホテル

参考文献
Geoffrey Bawa the Complete Works (David Robson, Thames & Hudson, 2002)

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2008.02 日本語版の文章、写真+英語版の写真

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2010.06 写真の変更
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カンダラマホテル (1994) - 歩廊とオープンスペース

カンダラマホテル (1994) - 客室

        Photo by Daigo Ishii