オスロの歴史的ホテル-2:
ホテルコンティネンタルとシアターカフェ
(オスロ、ノルウェー)
グランドホテルと並び、昔からオスロを代表するホテルだったのが、ホテルコンティネンタルです。
グランドホテルと同じく、王宮前まで続く公園に接し、目の前には、国立劇場が立ちます。地下鉄と国鉄の駅も、市電の停留所も歩いて1分ですから、地の利もこの上ありません。
アールヌーヴォーのホテルとして、期待したのですが、本館外観と、1階にある国立劇場御用達のシアターカフェを除くと、内部は、オリジナルの雰囲気は消え、といって、それに勝るインテリアに改修された訳でもなく、どこか、中途半端。部屋の設備は古ぼけ、インテリアのディテールは見えないところが手を抜かれ、意外と経営がたいへんなのかな、という気も少し。
そんな中、シアターカフェは、往時の唯一の記憶として、時間が飴色になったようなインテリアが残りますが、実は、これも、一度改変したものを、オリジナルに復元したようです。
オスロのホテルカフェのもう一つの双璧、ボザール風のグランドカフェは、同じ年代物でも、少し単調ですが、シアターカフェは、三角形の変形プランや、ホテルの下層で構造の自由が利かないという制約を感じさせない、というか、逆手に取った場所です。
大きく見晴らしを取ることの多い街角の部分に、敢えて、頭がぶつかりそうな中二階を設けたことで、天井が高いだけだった大きな空間に流れが生まれました。ちょっとした演奏や余興の舞台ともなり、活気が逃げるのを防ぐ盾にもなりそうです。その焦点に向かって、3角形の2辺に沿った長い客席スペースが伸び、アールヌーヴォーの優雅な意匠が繰り返します。余談ですが、床は、細かなリノリウムを組み合わせたものとのこと。
ホテルを設計したのは、オスロで数多くの商業建築を設計したイヴァール・コックですが、シアターカフェだけは、ブレド・グレーヴァによるもの。
1910年に完成したグレーヴァの代表作、トロンハイムのノルウェー工科技術大学本館は、ノルウェー流に解釈されたユーゲントシュティール(アール・ヌーヴォーのドイツスタイル)を代表する作品ですが、その10年前の1900年に完成した、このシアターカフェには、アールヌーヴォーのメインストリームの余韻が漂っています。
アールヌーヴォーをどうノルウェーにふさわしい形にするかを考えるまでには、まだ時間のある20世紀初め。前年にできた国立劇場とともに、このカフェの、輸入したてのスタイルが、新しい空気に満ちた場所として、オスロ市民を引きつけたことでしょう。
ホテルコンティネンタルの朝食はシアターカフェと思い込んでいましたが、実際は、新館の味気ない食堂。シアターカフェだったら、宿泊するモチベーションも上がるのに。
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交通
オスロ中央駅から電車で国立劇場前まで2分、そこからホテルまで徒歩3分。
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