フランク・ロイド・ライトの建築を巡って:
グラディー・ガメージ記念講堂
(フェニックス、アリゾナ、アメリカ合衆国)

ライトの死後に建設されたもう一つの作品は、アリゾナ州立大学のグラディ・ガメージ記念講堂です。

1959年、ライトが、友人であった学長グラディ・ガメージから受けた仕事で、1964年の竣工を見ることはありませんでした。3000人収容のホールで、ミュージカルや音楽系プログラムに利用されていますが、公演日以外の内部見学の伝手は見つかりませんでした。

外観の第1印象は、巨大な砂糖菓子。

ひょうたん型平面の本体の回りを、扇形の頭飾りの付いた列柱が巡り、そこから、駐車場とホールを結ぶための、2カ所の歩行者用ブリッジが腕を伸ばします。ブリッジは、「ようこそアリゾナ州立大学へ」を建築的に表現したものだそうです。

橙色の外壁の塗装や、露出した赤い煉瓦が、折からの夕日とシンクロして、オレンジに輝いていました。大通りから見えるファサードは、西を向いているので、夕日の効果も考えたのでしょうか。

列柱の扇飾りや、ブリッジの蔓が絡み合ったような照明には、ライトらしさがあるものの、どこか大味です。形が単純すぎる上に、列柱や窓と言ったエレメントが、同じデザインでただ繰り返されていることが理由です。外壁も無表情でつるんとしています。規則を乱す部分や、細かいディテールがあれば、印象も違ったかもしれません。

好意的にみれば、広大な駐車場の真ん中にぽつんと立っているので、茫漠としたスケールに合わせ、大きいエレメントで勝負した、とも言えそうですが、僕には、建築家本人が亡くなった状況で、余人には決定しがたく、物議をかもしかねないディテールを敬遠したように映ります。

ただし、これは、外回りの感想。窓に顔を押しつけて見た限りは、ロビーにも、覆すほどの印象はありませんでしたが、中に入ると、細やかなディテールに会えるのかもしれません。

今となっては悪い冗談ですが、元々は、イラクのバグダッドに計画していたオペラハウスの案を、転用したそうです。当時は、アメリカとイラクも蜜月だったのでしょうが、バグダッドからフェニックスに流転し、建築の運命も変わりました。ただ、ファースト・クリスチャン教会同様、初めの構想と違う場所であることが、実現した成果に、微妙な影を落としているような、いないような・・・。

実を言うと、甘すぎるお菓子には、胸焼けがしてしまいます。

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交通
フェニックスのダウンタウンから車で15分、Sky Harbor空港から車で10分。
フェニックスののダウンタウンからLRTに乗って、Mills Avenue駅まで約25分、駅から徒歩15分。

リンク
Graddy Gammage Memorial Auditorium

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旅行の際に調べた情報であり、評価については、各人でご確認下さい。

参考文献
"建築ガイドブックーフランク・ロイド・ライト" (Arlene Sanderson、水上優訳、丸善、2008)
Wikipedia

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グラディー・ガメージ記念講堂 (1964)

        Photo by Daigo Ishii