フランク・ロイド・ライトの建築を巡って:
ファースト・クリスチャン教会
(フェニックス、アリゾナ、アメリカ合衆国)
フェニックスにあるライトの大きな作品のうち、2つは、ライトの死後に建設されたものです。
1つめのファースト・クリスチャン教会を訪れたのは、日曜日の朝でした。ドアを入ると、丁度、礼拝が始まるところでした。
外観やインテリアの写真から、何となく秘蹟の雰囲気を感じ、ぼんやりとカトリックの流れを汲む宗派と見ていましたが、礼拝風景は、思いこみを裏切るものでした。
参列者の空気に重苦しさはなく、牧師の言葉が終わると、エレキギターを持ったお兄さんが壇に上がり、乗りのいいカントリー・フォークの賛美歌を歌い出したのです。古い賛美歌やゴスペルとも違い、街道をのんびり旅するような、前向きな曲調で、原罪とか贖罪なんていうものは、道中の乾いた風で気化してしまいそうです。手を叩きたくなるリズムで、参列者もスウィングしながら、歌い始めます。
宗派の教義を調べても、よくわからなかったですが、礼拝の席で感じたのは、平明な新興派。キリスト像やマリア像を祀った祭壇もありませんから、カトリックでないことは確かです。
晩年、ライトが別の神学校のために計画した教会を、没後の1970年、教会のメンバーが、ライト財団に働きかけて実現したのが、この建築です。
三角形の平面は、三位一体を象徴しているそうですが、低い軒と強い尖塔の対比、万華鏡のように反復するステンドグラス、鈍く金色に光る天井、そして、岩を埋め込んだ壁まで、デザインは劇的で、ときに、神秘主義の気配をまとっています。
それでいて、いちばんの焦点の祭壇は、自然光の入りも悪く、天井も抑えられた、そっけない扱いで、元からここに計画されていたのだろうか、という疑問も沸きます。
そして、都市から距離を置き、豊かな郊外住宅地や、自然や環境とつながる建築にこそ、本領を発揮したライトからすると、大きな芝生で距離を取ったとは言え、建て込んだ住宅街の敷地は、ちょっと違和感もあります。元々は、フェニックス郊外、グレンデールに計画されたというから、もっと、自然に近いイメージだったのかもしれません。
違う敷地や宗派を想定した建築を、この場所に転用したことが、空間のイメージと教義のずれや、使い方の不整合を生んだのかな、というのが率直な印象。
建築の質が低い訳でもなく、親切に見所を解説していただいた教徒の話振りからすれば、誇りとしているのも確かです。古今東西、宗教建築には、建築で宗教観を表現する面と、空間効果で新規信者を獲得する面があったから、これでいいとも言えるし、あるいは、この宗派には、明るく光が注ぎ、外に開かれた建築がふさわしいとも思えるし・・・。
自身も預かり知らぬところで、換骨奪胎されて実現したこの教会を、ライトはどう考えているのでしょうか。
交通
フェニックスのダウンタウンから車で約20分、空港から車で約30分。
フェニックスのダウンタウンからバスで約30分。
宿泊施設のリスト
Aloft Tempe
Arizona Biltmore Hotel
Camelback Inn
Hermosa Inn
Hotel San Carlos
Hyatt Regency Scottsdale Resort and Spa at Gainey Ranch
Royal Palms Resort and Spa
The Canyon Suites at The Phoenicia
Americas Best Value Inn-Downtown Phoenix
Days Inn Scottsdale Fashion Square
Motel 6
Maricopa Manor B & B Inn
旅行の際に調べた情報であり、評価については、各人でご確認下さい。
参考文献
"建築ガイドブックーフランク・ロイド・ライト" (Arlene Sanderson、水上優訳、丸善、2008)
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