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斜面住宅地に立つ住宅。2002年に夫婦+9歳から4歳の3姉妹のための住宅としてつくった。竣工から21年後、子供たちは独立し、夫婦2人のための住宅として改修した。

2002年
敷地と道路の間に半階の高低差があることを利用し、7レベルのスキップフロアーで室内を構成した。

すべてのレベルから、半階上と下のレベルが見え、また、半階上の窓の先の空に視線が抜けるつくりとし、視覚的広がりで、39平米という建築面積の小ささを感じさせないようにした。
階毎に断絶しないスキップフロアーの効果が、5人家族の間に、階を超えたシームレスなコミュニケーションを生み、南北の窓と高低差により、春から秋まで、自然通風を主体に暮らせるようにした。

近隣の住宅でよく見掛けた、ありふれた地場の建築ボキャブラリー(ALC版、コンクリート擁壁、 ネットフェンス、吹付塗装、建物配置)を再構築して、地域景観とつながりながら、どこか自立し た印象を持つように外観をデザインした。

2023年
夫婦2人の新しい生活のために、動線を大きく変更した。

2002年には、前面道路に面した地階の入口を玄関としたが、2023年のリニューアルにおいては、1階のテラスに上がる屋外階段を新たに設け、屋外テラス経由で、直接、1階の居間に入る、客用の新しい動線となった。

地階の多目的室は、将来、高齢になったときは、浴室とトイレに隣接しているため、寝室とする。

1階の居間の玄関部分は、モルタルの土間とした。自転車競技を行なっている施主が、居間で自転車のチューニングを行うスペースを兼ねている。

この21年間、3人の子育てによる負担で、室内は相当汚れ、さらに20年間メンテナンスを行っていなかったこと、さらに、仕事の関係で、この4年間空家だったため、かなり痛んだ状態なっていた。それを再生し、快適な空間を取り戻すことが課題となり、特に、内壁で多く使われているシナ合板の再生に、多くの手間を掛けた。

冬場の環境性能を向上させるために、可能な開口部はすべてに内窓を設け、それ以外の開口部は、断熱性能、防音性能の数値の高いカーテンを設置した。

所在地 東京都町田市

延床面積  110 m2

構造 鉄筋コンクリート構造+鉄骨造地下1階+2階建

構造設計 大賀建築構造設計事務所

設備設計 明野設備研究所

設計協力 加藤弘行

施工 相模鉄建

 

掲載誌、書籍
2002.07. Lives 2002年夏号
2004.10. House Design(Daab, ドイツ)
2012.12. House & Houseing 101(designzens, 中国)

夫婦の寝室から半階上の子供室と半階下の居間を見る。2つの階と空に視線が抜けるために、36平米の床面積とは感じられない。

道路と敷地の高さの差が半階あることを利用したスキップフロアーの住宅。外から見たときは、周辺の家から突出しないように、壁の位置やボリューム構成を、回りに合わせている。外観は、周辺の住宅地でよく使われている素材を使っているが、印象はかなり違う。(撮影:藤井浩司 TOREAL)

道路側の正面から見た外観の昼景。玄関は、道路レベルにあり、半地下となる。コンクリートの擁壁の両側の低くなった部分が、敷地レベル。改修により、右手の扉の奥に、1階テラスに上がるための階段が新設された。(撮影:藤井浩司 TOREAL)

道路側の正面から見た外観の夕景。(撮影:藤井浩司 TOREAL)

コンクリート擁壁、ALC板、金網など、このあたりでよく使われている材料を使っているが、使い方を変えることで、街並から突出せず、それでいて、自律的な雰囲気をつくり出す。テラスは、溶融亜鉛メッキを施した鉄骨でつくっており、竣工から20年以上経っても、錆は出ていない。

新しく設置された階段により、道路から、直接1階のテラス経由で、1階の居間にアクセスできるようになった。テラスの床は、長期的な耐久性のあるセランガンバツのデッキ材。

道路と敷地の高さの差が半階あることを利用したスキップフロアーの様子を示す。全部で、7つのレベルからなる。各階からは、半階上と下の空間や空が見えるので、実際より、広く感じられる。家族のコミュニケーションも、水平方向だけでなく斜め方向にも発生し、いっそう活き活きする。

最下層で、地階扱いとなる道路レベル。竣工時の玄関から室内を見る。竣工時は玄関だったが、22年後の改修で、テラス経由で、1階の居間に直接入る動線をつくったため、正式の玄関は上階に移った。奥に、半階上にある1階の厨房が見える。厨房の床下は、多目的室側から使う、奥行のある床下収納となっている。(撮影:藤井浩司 TOREAL)

地階を見る。竣工時は、施主の書斎とピアノ室だったが、22年後の改修では、多目的室となった。将来、高齢になったときには、水回りに近いこの場所にベッドを置くことを想定している。右手は洗面所。

最下層の道路レベルにある階段の上り口から、道路レベルの多目的室、右手に洗面所を見る。階段の踊り場が、半階上の厨房、さらに階段を県ところが、1階の居間となる。(撮影:藤井浩司 TOREAL)

多目的室から半階上の厨房。半階上の居間と半階下の書斎を見る。居間の窓越しに空が見える。厨房の食卓は、ムクのサクラ板を使い、食卓の床面には、輻射暖房機を置き、食事時の足を暖める。

階段を挟んで、左手に1階の居間、右手に、半階低い1階の厨房を見る。1階の居間には、改修により設けた土間と玄関のドアが見える。

厨房から半階上の居間。半階上の夫婦の寝室と半階下の厨房を見る。22年後の改修で、テラス経由で入る正式な玄関を居間に設け、土足のため、および、施主の趣味である自転車のチューニングスペースとして、土間を設けた。(撮影:藤井浩司 TOREAL)

(左)居間から半階上の夫婦の寝室と半階下の厨房を見る。(右)居間のレベルから、階段越しに、左手に半階上の夫婦の寝室、右手に居間と、その1階上のワークスペース(竣工時は子供室)を見る。各レベルがつながって行く。

夫婦の寝室から半階上のワークスペース(竣工時は子供室)と半階下の居間を見る。2つの階と空に視線が抜けるために、36平米の床面積とは感じられない。(撮影:藤井浩司 TOREAL)

子供室から半階下の夫婦の寝室と半階上のテラスを見る。 夫婦の寝室は、折戸で開閉できる。屋上テラスに面した窓は、改修により、内窓を設け、2重窓になった。(撮影:藤井浩司 TOREAL)

竣工時は、3姉妹の子供室の学習スペースで、子供たちの独立した22年後の改修で、ワークスペースに変更。3つの通路は、姉妹ごとに割り振られ、それぞれの洋服箪笥と収納を設置していた。通路経由で、半階下の夫婦の寝室と半階上のテラスを見る。ルーバー窓の光の反射により、天井に、光の波紋が現れる。(撮影:藤井浩司 TOREAL)

2階のワークスペース(竣工時は子供室の学習スペース)。半階上のロフトを見る。ルーバー窓の光の反射により、天井に、光の波紋が現れる。

(左)2階のワークスペース(竣工時は子供室の学習スペース)。(右)ワークスペース(竣工時は子供室の学習スペース)の通路スペース。3つの通路が、姉妹ごとに割り振られ、それぞれの洋服箪笥と収納を設置していた。改修により、ワークスペースのバックヤードとなる。

2階子供室の学習スペースから、通路の向こうに、半階下の2階夫婦室と、屋上のテラスを見る。通路の上は、竣工時には、3姉妹の就寝スペースだったロフト。(撮影:藤井浩司 TOREAL)

2階のロフト(竣工時は子供室の就寝スペース)。すの子は、竣工時に子供たちの布団がむれないようにしたため。改修により、窓は内窓を付け、2重窓となっている。