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弥彦山と角田山の2つの山を望む、新潟平野西端に位置します。

クライアントは、山の眺望を希望しましたが、実際には、前の家に遮られ、角田山は見えず、今は見える弥彦山の眺望も、将来はどうなるか不安定でした。

例え、見えなくなっても、2つの山は、この場所のアイデンティティーであり、狭い敷地の向こうの、大きな世界を示唆します。山の存在を、生活しながら意識する羅針盤として、設計しました。

「2つの焦点」
家の正面は、敷地の角度とは無関係な2つの斜め面から構成されています。一つは、住宅の中心から弥彦山に、もう一つは、角田山に向かう軸の直交面です。

将来の変化も想定すれば、直交面の開口部が提供するのは、「山の見える風景」ではなく、周囲が変化しようとも、大きく変わることなく存在し続ける、「山の暗示」です。そして、ここはまた、その2つの山系が交差する場となります。

「引き伸ばされた1階」と「縮められた2階」
1階の長い廊下の両端には、鏡が張られています。
鏡の効果で、廊下の奥行は引き伸ばされ、実際以上に、距離が長く演出されます。

窓からの高照度の光と、濃い色の壁との輝度差により、照度は明るいにもかかわらず、壁の暗さが際立ちます。

どれも、2階との対比をつくるためでした。

2階は、2つの直交面に向かって、放射状に開いています。

平面的には、壁や家具を放射状に配置し、断面的には、奥から窓に向かって、天井に上向き勾配を付けています。そうすることで、1階とは対照的に、逆パースペクティブが、奥行を縮め、山を近づけて行きます。

2つの直交面は、鈍角でぶつかります。平面や直角の窓とは違い、環境の中に、室内が、やわらかく入り込んで行く効果を生みました。

そして、また、鈍角で町に対して突き出すことで、少し生気に乏しい街並に対して、この建築自身が、今度は小さなランドマークとなることも意識しています。

 

所在地 新潟県新潟市

延床面積 120.83m2(36.5坪)

構造 鉄骨造2階建

構造設計 大賀建築構造設計事務所

設備設計 マイ設備設計

設計協力 加藤弘行、田村新、Apartment、田中理絵子(遠藤照明)

家具 Apartment 

施工 新潟プレハブ工業

 

掲載誌、書籍
2009.03. 住まいnet新潟2009年春夏号
2010.03. 新建築住宅特集平成22年4月号
2010.08. Collection : Asian Archtiecture( Braun、スイス)
2010.08. Discover Details in Residence( Phoeinix、中国)

ウェブマガジン
2010.06. Architecture News Plus
2011.07. Archello
2012.01. AECCafe

 

 

2階のLDKを見る。角田山と弥彦山に向いたファサードに大きな連窓が設けられている。

南側から、弥彦山に向いたファサードを見る。キャンティレバーで張り出した部分の1階は、駐車場となっている。

道路側からの外観。陽の当たっている面が、角田山に向いたファサード。外観の2つの面は、鈍角で柔らかく町の中に突き出している。

(左)南側から、弥彦山に向いたファサードを見る。(右)弥彦山と角田山に向かう2つの直交面が交わる部分を見る。

キャンティレバーで張り出した部分の、1階の駐車場の夜の様子。2階へ上がる階段が、大きな照明のように光る。

1階の廊下を見る。廊下の両端には、鏡が貼られ、長い廊下の距離をさらに強調する。1階の奥行を引き伸ばし、2階との対照を明確にする。

1階の廊下から階段を見る。階段両側は、ペアガラスの内側にツインポリカーボネート板を貼り、木漏れ日のような光が入って来る。

1階の個室を見る。3つの個室は、折戸を開くと、大きな一つながりの空間になる。

1階の個室を見る。角田山と弥彦山に向いた2つのファサードに対して、窓面が設けられ、その交点が鈍角で交わる。

2階のLDKを見る。窓は全開でき、暖かい時期、窓を全開すると、気持ちのよい風が抜ける。

2階のLDK。壁や家具も放射状に外に向かって開き、天井も外に向かって勾配が付く。室内から外までの距離が縮小され、外が近くに感じられる。

2階のLDKを見る。ファサードの連窓は、角田山と弥彦山に向く。左手には、弥彦山のシルエットが見える。

2階の洗面所と浴室。子供が小さいので、LDKと隣接している。欄間や高窓から、1日を通して光が入り、時間とともに洗面所の表情も変化する。

夜間、住宅に灯が戻ると、生気に乏しい町に対して、灯台のような小さなランドマークとなる。