弘前 近世の建築:
誓願寺山門(弘前、青森、日本)
人の顔にしても、建築にしても、いつもとはちょっと角度を変えるだけで、思いもよらない見え方をします。
誓願寺の山門がまさにそれ。平入の一般的な門に対して、誓願寺の山門は妻入。妻側から見ると、門とはこんなに優雅な見え方をするのですね。
重要文化財に指定されている門は、江戸時代中期の建立ですが、桃山風の華やかな意匠にあふれています。
平入の山門では、閉じていれば、門扉の装飾も見所ですが、どちらかと言えば、均等に割り付けられた垂木が、軒裏をすべり落ちる端正さや、柱と梁がつくる架構の迫力など、構造のつくる美に引きつけられます。
塀が両脇に控える場合も多いので、なかなか脇からの見えまでには目が行きません。だから、誓願寺の参道に立ったとき、妻入の見え掛かりの意外さに、はっとしたのです。
妻側を見せる門では、構造の強さは遠ざかり、代わりに、壁を埋めるさまざまな可愛らしい文様が、自己主張を始めます。
別称の鶴亀門の由来となったのは、破風板の下に取り付けられた懸魚(げじょ)の鶴と亀ですが、鶴も亀も、軒下から宙に今にも飛び立ちそうなぐらい、活き活きとしています。そこに、蟇股の間に描き込まれた十二支の絵も加わり、色と言い、図像と言い、縁起のよさで埋め尽くされています。
どこか粋に見えるのは、間口に比べて背がひょろっとしたバランスや、重なり合う軒が、着物を着崩した立ち居振る舞いを思い出させるからでしょうか。
境界を意識させ、ここから違う場に入ることを強調する門とは、本来、強い存在です。平入にして、幅を広く取った上で、構造材の強さや緊張感を見せることは、権力を暗示する効果を上げます。そういう強さとは無縁で、ほっそりとたおやかな、この妻入の誓願寺の門は、優しく、楽しく、気軽に通り抜けてしまいそうです。
交通
弘前駅から弥生、枯木平方面行きバスで20分(1時間に1、2本)、工業高校前で下車、徒歩5分。
リンク
弘前市役所
弘前観光コンベンション協会
弘前総合情報RIng-O Web
宿泊施設のリスト
弘前市旅館ホテル組合
参考文献
「青森県の歴史散歩」(青森県高等学校地方紙研究会編、山川出版社、2007)
あおもりの文化財
文化遺産オンライン
Wikipedia
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