青森の森を抜けて - 八甲田から十和田へ:奥入瀬渓流 - 3
(十和田、青森、日本)

「雲井の滝」から「九十九島」を経て「阿修羅の流れ」までが、苔むした岩と白糸のような流れがつくる奥入瀬のハイライトです。流れは、幾重にも枝分かれしては一つになり、浮島のような小岩や中州を白く包んで行きます。6月半ば、植物は、すでに育ちすぎて、スケールが生々しく見える部分があるものの、時には、大海の荒波に浮かぶ小島そのものに見えて来ます。

「阿修羅の流れ」を過ぎ、橋を渡ってしばらくは、車の通る国道を歩くことになります。今までの心地よい気分が相殺され、奥入瀬渓流の中で、残念なところ。

再び散策路が始まり、ほっとするのも束の間、日が西に動き始め、空気が変わって来ました。西岸にそびえる、方状節理の壁が日差しを遮るため、午前中の明るい雰囲気から一転して、森は薄暗くなり、「馬門岩」や「石ヶ戸」と言った、摩崖仏か神話の舞台となった岩屋の如き巨岩も現れるため、どこか古代の森に迷い込んだようです。

ようやく、「三乱の流れ」に到着したのは、子の口を出発して4時間半後のこと。同じように苔むした岩に植物が生えていると言っても、ここは、水に、盆栽の鉢が浮いているようです。急流とまでは行かず、川底の地色が見えるため、水面も暗々として、白い背景にはならず、ちょっと趣が違っていました。

庭園の原風景を、個人的に感じた奥入瀬ですが、観光バスで見所の「図」のスポットだけを訪れた最初のときと、子の口から三乱の流れまで、スポットをつなぐ「地」の森のシークエンスを含めて、徒歩で下ったときに感じた違いは、緩急のバランスでした。

「急」である見所だけをつまみ食いしたときには分かりませんでしたが、人の手になる庭園に比べると、「緩」である「地」の森のシークエンスが、非常に長いのが、奥入瀬の、そして、自然の特徴なのです。

逆に言えば、静寂に見える日本庭園とは、実は、緩急のバランスを、「急」側にかなり強調したものであり、人間の知覚の快さのために、「緩」がはしょられ、詰め込まれたものでもあったのです。

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交通
八戸駅からバスで焼山まで1時間30分、十和田湖休屋まで2時間15分(冬季を除き1日3便)。青森駅からバスで焼山まで2時間30分、十和田湖休屋まで3時間15分(冬季を除き1日5便)。

リンク
奥入瀬渓流

十和田市役所
十和田観光協会

青森県観光情報サイト

宿泊施設のリスト
十和田観光協会 - 泊まる

参考文献
"青森県の歴史散歩" (青森県高等学校地方史研究会編, 山川出版社, 2007)
"郷土資料事典 青森県" (人文社, 1998)

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雲井の滝から三乱の流れまで

        Photo by Daigo Ishii