シンガポールのお屋敷町
(シンガポール)

シンガポールでいちばんのショッピングエリア、オーチャードから少し坂を上ったあたりが、ナッシムロードの入口です。

熱帯の高級住宅地にふさわしい大樹の並木道に沿って、しばらくは高級コンドミニアムが続きます。外装もきれいで、最近のデザインボキャブラリーを押さえたものも多いから、古いお屋敷が取り壊され、近年、建て替えられたのではないでしょうか。コスト高めの仕上、適度な一棟の規模、余裕のある敷地・・・。シンガポールの一般市民用の高層アパートとは、明らかに差別化されています。

しかし、このあたりは、まだ、新参のエグゼクティブ向けというところかもしれません。しばらくすると、狭い国土や一般住宅地の建て込み方からは想像できないぐらい、広大なお屋敷町に切り替わります。

時々、数軒に切り売りされたところもありますが、それさえも、かなりの大きさ。そのぐらいまでは、建物が見え、可愛いものですが、本当のお屋敷になると、道路からは、手入れのされた庭や樹木の彼方に、建物の一部が、ちらっと見える程度。赤瓦の屋根や、大きいことは分かっても、遠すぎて、昔ながらのコロニアル建築かどうかさえ、判然としません。

そうやって、建物や情報が、かすかに見え隠れするリズムそのものが、一等の高級住宅地ならではです。

為替レートによりますが、シンガポールは、今では、大卒の初任給が、日本を抜くほど。中学と高校入試の成績で、エリートコースに乗るかどうかが決まり、その後のリベンジは、ほとんどできない、という過酷な一面も併せ持ちますが、それでも、リー・クワンユーの政策が、一般国民の生活水準をかさ上げし、その上での、高所得者層だから、よしとしましょう。貧富の格差で、金持ちを出現させる、第3世界の国とは、ちょっと違います。

ナッシムロードを歩いての驚きは、2キロ近くにわたって、他の通りに抜ける道のないこと。歩き始めたら、終点の植物園まで、リタイアはできないということです。

そして、オーチャードからしばらくはあった歩道も、途中からは、車道のみ。すれ違う人もいません。

つまり、使用人は別として、車に関する税金がとてつもなく高いシンガポールで、車を持てる限られた層以外を、婉曲的にお断りしているエリアなのです。

一方で、検問も監視カメラも高い塀もない、ナッシムロードからは、シンガポールの金持ちの様子だけでなく、社会の成熟と平穏さも、垣間見えて来ます。

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交通
ナッシムロードの南側入口までは、オーチャードから歩いて5分。北側入口は、植物園東口からすぐ。

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参考文献

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シンガポールのお屋敷町の街並

         Photo by Daigo Ishii