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冬季最大4mの雪をみる、日本有数の豪雪地帯に立つ、公共の宿泊コテージ。ブナ林の公園の中にあります。

リフレッシュの場として、周辺の自然だけでなく、建築空間体験からも新鮮なコテージをつくろうとしました。

外形は、総工費から可能な最大容積を確保するように決め、それを地域の雪に対する建築的作法に従って現実化しています。

室内の大きなボリュームは夏の過ごしやすさにつながり、雪の作法は、道路が孤絶する冬季、管理なしで豪雪に耐えるための必須条件でした。その「大きな箱」の外形が室内にダイレクトに現れています。

一方、滞在に必要な機能(調理、食事、洗面、入浴、就寝)を線状に並べ、「チューブ」と名付けました。

2つを重ねるに際し、チューブは大きな箱の制約で複雑に折り曲げられ、大きな箱は曲げられたチューブにより、不定形に切り欠かれます。外形が決めるボリュームと、機能が決めるボリュームのずれをずれのまま提示し、思い掛けない空間を出現させようとしました。

大きな箱は黒く、チューブは白く仕上げています。チューブはいろいろなレベルから成り、平面だけでなく垂直方向にも動き回る空間です。それに対して、機能の弱い大きな箱は、動きを抑えた空間となります。2つの空間の対比は、対照的な視点を提供し、コテージを囲む林を豊かに立ち上がらせます。

外壁は、地域の伝統工法、押縁下見板張りとし、黒い色は焼き杉に合わせています。地域の蔵や民家に近い見慣れた印象となるため、公園を訪れる住民は環境の中で存在を強く意識しません。ブナ林の公園に建つことへの配慮です。

室内に入ると外観の抑えたイメージから一転します。大きな箱とチューブのコントラストに加え、見慣れた外観と見慣れない内部というもう一つのコントラストが生まれます。

建物は、東西南北軸に合わせて、配置しています。世界の大きな軸である方位を意識し、真東と真西に面した就寝スペースで、日の出と日没を体感してもらうためです。

 

所在地 新潟県十日町市川西

延床面積 67.5m2(20.4坪)

構造 木造2階建

構造設計 南雲正一+匠設計

設備設計 拓越

設計協力 加藤弘行、渡辺和夫

施工 高大建設・ダイモン建装共同企業体

 

受賞
2000.10. グッドデザイン賞
2001.03. 北陸建築文化賞
2003.06. カナダグリーンデザイン賞

展覧会・芸術祭
2000.07. 越後妻有トリエンナーレ大地の芸術祭(新潟、日本)
2002.10-2004.05 45under45 45歳以下の日本の若手建築家展(ヨーロッパ巡回 - 埼玉県立近代美術館、埼玉、日本)
2014.12. 未来を担う美術家たち 建築×アート Domani・明日展(国立新美術館、東京、日本)

掲載誌、書籍
2000.06. 新建築平成12年6月号
2001.07. 大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2000
2000.09. wallpaper2000年9月号 (wallpaper, イギリス)
2000.12. Be Pal2000年12月号
2001.01. Good Design Award2001
2001.03. 大地の芸術祭記録集
2002.01. MEMO平成14年1月号
2002.02. 106人の家づくりびと
2002.03. 日本建築学会作品選集2002
2002.04. Actus Style Book vol.7
2002.10. 45under45展覧会カタログ
2003.07. 大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2003
2004.10. House Design (Daab, ドイツ)
2006.03. Small Houses in Nature (Links, スペイン)
2006.07. 2000 Architects (Image,オーストラリア)
2006.07. 大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2006ガイドブック
2006.08. ミセス平成18年8月号
2006.08. Casa Brutus平成18年8月号
2006.10. Interni & Decor (Mincom, 韓国)
2008.09. 100×400 (RIHAN CC、中国)
2009.02. 200 House Outstanding Ideas (Firefly Books, USA)
2006.07. 大地の芸術祭アートをめぐる旅ガイド
2009.12. Architecture Caribbean (Architecture Caribbean, USA)
2010.05. 新聞「Claris」誌2010年.05.04号(Claris新聞社、アルゼンチン)
2011.01. Country House : Architecture + Design( Braun,スイス)
2012.05. Discover Details in Residence( Phoeinix,中国))
2012.12. House & Houseing 101( designzens,中国)
2014.03. Designers File 2014(ワークスコーポレーション, 日本)
2014.07. Time Space Existence, Made in Europe, La Biennale di Venezia 2014(Global Artfair Foundation, Nethreland)
2015.12. Beauty of Space (Braun、スイス)

ウェブマガジン
2010.04. e-architect
2010.06. Architecture News Plus
2010.12. architizer
2011.07. AECCafe
2011.08. Arquitectura y Madera

室内を見ている。黒い大きな箱の中に、白く目透かし貼りのチューブが、折り曲げられながら浮いている。午後になると、チューブの目透し貼りの板が、逆光で浮かび上がる。撮影:(左)新建築写真部、(右)藤井浩司(ナカサ&パートナーズ)。この建築のコンセプト図。大きな黒い箱とチューブの2つの空間を重ね合わせて、出来上がっています。

ブナ林の公園に立つコテージ。左は、5月初めの新緑の頃、右は、3月の末、雪が溶け始めた頃。冬は、最大、軒の高さまで雪が積もる。雪により交通が途絶する場所に立つため、管理なしに豪雪に耐えることが求められた。コテージの形は、豪雪に対するこの地方の建築ディテールに準じる。

東側外壁。伝統的工法、押縁下見板張りで、焼き杉の色に近く仕上げた。地域で使われ、住民の見慣れた工法で、建築の印象を弱めようとした。

一見すると、地域の民家に似ているが、仔細に観察すると、違和感がない程度に、どこか違う気配を持つ。

豪雪に耐えるためのディテールの説明。

大きな箱から目透し貼りのチューブを見る。チューブには、調理、食事、洗面、入浴の機能が入る。撮影:藤井浩司(ナカサ&パートナーズ)。

(左)大きな箱の中の折り曲げられたチューブ。撮影:藤井浩司(ナカサ&パートナーズ)。(右)目透し板越しに、チューブの内部がかすかに見える。

チューブを大きな黒い箱から見る。目透し貼りの壁を通して、内部の様子が浮かび上がる。

チューブの目透し板の詳細、。向こうの森の様子が、うっすらと見える。撮影:藤井浩司(ナカサ&パートナーズ)。

チューブの内部を見る。白く仕上げ、アップダウンのある内部によって、黒い箱の中から見るブナ林とは違うブナ林の風景が現れる。

黒い大きな箱から窓越しにチューブの内部を見る。

(左)チューブの内部。食事スペースから洗面スペースと2階の就寝スペースを見る。(右)洗面スペースから食事スペースを見る。

(左)チューブの目透し板のディテール。向こう側のブナ林の風景が見える。(右) 2階の就寝スペースから、1階の食事スペースを見下ろす。

チューブ内部、2階の就寝スペースを見る。真東と真西に向いており、地球の基準軸である方位を意識する。

チューブ内部。朝には日の出を、夕には日没を体験することができる。